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核なき世界「日本先頭に」 オンライン会合続く 原水協・禁大会

 日本原水協などと原水禁国民会議などの二つの原水爆禁止世界大会は長崎原爆の日の9日、それぞれオンライン会合を続けた。平和活動家や被爆者たちが日本政府に核兵器禁止条約への参加など核なき世界に向けた動きの先頭に立つよう迫るメッセージやアピール文を発表した。

 原水協などは大会最終日の長崎デーを、ビデオ会議システムで東京や米国、韓国をつないで開いた。長崎で被爆した日本被団協の田中熙巳(てるみ)代表委員(88)は、条約の批准国が発効に必要な50カ国・地域まで残り7カ国になったことに触れ「新型コロナウイルスの感染拡大の中でも力を落とさず、年内の条約発効を実現させよう」と呼び掛けた。

 その後、日本を含む全ての国に対し「被爆者の声に耳を傾け、条約へ速やかに署名、批准を行う」ことを求めるメッセージを発表し、大会を締めくくった。

 原水禁などの長崎大会は、事前収録の映像を動画投稿サイトで配信。長崎県原水禁の山下和英副議長は「被爆国の日本政府が条約に署名せず、怒りを禁じ得ない」と強調した。長崎の被爆体験者の山内武さん(77)=長崎県諫早市=は「被爆地は長崎が最後であってほしい」と願った。

 最後に「核廃絶と被爆者救済を一刻も早く実現しなければならない」とするアピール文を採択した。原水禁などは12日、福島大会をオンラインで開き、全日程を終える。(河野揚)

熱気醸成や周知課題

 被爆75年の節目に開かれた二つの原水爆禁止世界大会は、新型コロナウイルスの感染防止のため広島、長崎両市で集会を開かず、オンライン会合という異例な形での開催となった。海外の被爆者や平和活動家とつながりやすいメリットの一方、訴えが広く届いたのか分かりにくいなど課題も浮かび上がった。

 「安倍晋三首相は核廃絶運動のリーダーとなるべきだ」。日本原水協などが2日開いた国際会議でこう訴えたのが、カナダから参加した広島市出身の被爆者サーロー節子さん(88)だった。被爆者が高齢化して長距離移動が難しくなる中、オンラインの活用には新たな可能性を感じた。

 ただ広島原爆の日の6日と長崎原爆の日の9日に開いた会合のリアルタイムでの視聴数は原水協などが千前後、原水禁などは千を下回った。いずれも広島、長崎両市の集会で数千人規模を動員する例年に比べれば参加者の熱気を感じにくく、物足りなさもあった。

 毎年広島市に集う平和活動家たちからは「顔を合わせることは大事。オンラインは今回だけにしてほしい」との声も聞かれた。被爆地で核なき世界に向けた「連帯」を感じる機会でもあったことを裏付けた。

 運動の担い手の高齢化で手詰まり感が漂う。オンラインは誰でも参加でき、若者の関心を高めるツールとして可能性を持つ。それだけに十分に生かせず、アピール不足だった感は否めない。主催者は今回の試みを検証し、新型コロナの時代に核兵器廃絶を強く広く訴える方法を模索してほしい。(河野揚)

(2020年8月10日朝刊掲載)

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