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京都から被爆地を語り継ぐ 2世・3世、50人の証言集

 「京都『被爆2世・3世の会』」(京都市)が、府内在住の被爆者50人の証言をまとめた「語り継ぐヒロシマ・ナガサキの心 上巻」を被爆75年に合わせて出版した。被爆者の子や孫と市民が、身近な被爆者から記憶を聞き取ったり、体験手記を読み込んで記録したりする活動の成果をまとめた労作だ。(新山京子)

 広島で被爆した35人と、長崎で被爆した15人の証言を収録する。当時18歳で爆心地から1・8キロの千田町(現広島市中区)で被爆した男性は、熱線で左半身に大やけどを負った。臨時救護所で水を飲んだ人たちが「あくる日、ウーンウーンと唸(うな)りながら死んでいった」と振り返る。

 長崎で入市被爆した男性は、犠牲になった家族6人を自らの手で荼毘(だび)に付した。「上空がピカッと光った時からの情景が繰り返し現れて来て、毎晩苦しんだ」とつづる。

 被爆2世の5人は、家族の体験を書き記している。同会世話人代表の平信行さん(69)=京都市=は、広島で被爆した両親を持つ。軍属だった父親は22歳の時に宇品(現南区)の船上で被爆。7日から4日間、流川町(現中区)辺りで遺体処理に従事した。「壮絶な経験が父の平和を求めた戦後の生き方に影響したのだろう」と記す。

 府内で被爆者健康手帳を持つ人は849人。同会は2012年10月に結成し、メンバー約100人が活動している。これまでに被爆者や遺族合わせて約80人から証言を聞き取っている。今回、上巻に収録した50人のうち11人は出版を待たず他界したという。追って下巻も出版し、計100人分の証言の紹介を目指す。

 同会は被爆2世・3世の健康調査も今春開始した。平さんは「あの日の体験を人前で話したり、書き記したりすることは難しい、という被爆者は多い。そんな人たちの苦しみや平和への思いをできる限り記録に残したい」と話す。ウインかもがわ刊。521ページ、2200円。同会☎075(811)3203。

(2020年8月10日朝刊掲載)

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