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エリザベト音大開校 ゴーセンス神父 戦時中 抑留の姿記録

 エリザベト音楽大(広島市中区)の初代学長で戦後の音楽教育に尽力した故エルネスト・ゴーセンス神父の写真の複写を、被爆者の森重昭さん(83)=西区=が同大に寄贈した。戦時中、三次市の民間人抑留所で撮影されたカットで、同大は「当時の関係資料は少なく、貴重」と話す。

 森さんによると、写真は1942年ごろ抑留所の建物前で撮影。ゴーセンス神父の他、同じく収容されていた煉獄(れんごく)援助修道会三篠修道院(現西区)のシスター4人らも写っている。米兵捕虜などの原爆犠牲者について研究を続ける森さんが10年ほど前、抑留所を警備していた元警察官の遺族から複写を入手したという。

 抑留所は太平洋戦争の開戦後に開設。幟町教会(現中区)の司祭だったゴーセンス神父も「敵国」のベルギー国籍であることから収容され、その後、移送先の埼玉県内の抑留所で終戦まで過ごした。戦後に広島へ戻って48年、復興に取り組む市民に音楽で希望や夢を与えようと同大の前身「広島音楽学校」を開校した。

 森さんの妻佳代子さん(78)は同大の卒業生。生前のゴーセンス神父と交流があり「厳しい中にも愛がある人だった」と振り返る。森さんは「音楽を通して平和を希求した神父の思いを後世に残してほしい」と話している。(山下美波)

(2020年8月10日朝刊掲載)

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