×

ニュース

若者一家迎え過疎地に活気 廿日市・大虫集落 栃木から安心求め移住

 過疎化が進み、住民が高齢者5人になっていた広島県廿日市市虫所山(むしところやま)の大虫集落に、栃木県から楠田泰久さん(30)一家3人が移り住んだ。緑に囲まれた環境と穏やかな人の縁に包まれて、農作業をしながらの子育てを思い描く。住民の見守る目線は温かい。(村上和生)

 「おばあちゃん、畑仕事しとるん」。集落最高齢の斉藤チエ子さん(95)方に明るい声が響く。泰久さんが妻瑞穂さん(31)、長男楓羽太(ふうた)君(10カ月)と散歩の途中で立ち寄り、軒先で会話を楽しむ。

 実家のある同県真岡(もおか)市で書道教室を営んでいた泰久さん。約130キロ先の福島第1原発の事故後、楓羽太君が生まれた。安心して子育てができる環境を求め、瑞穂さんの実家がある広島県内への移住を決めた。

 瑞穂さんの就職が廿日市市津田の農園での研究員に決まり、近くで13年間空き家だった民家を借りて3月下旬に引っ越した。泰久さんは家事と育児に励む。家族で食べるネギやサトイモの栽培も敷地の畑で始めた。野菜をもらうなど、住民との交流も芽生えた。

 大虫集落は、市佐伯支所から約6キロ北にあり、住民は全員65歳を超える。秋祭りが2年前に途絶えていた。斉藤さんは「大虫が明るくなった」と喜ぶ。

 保育園や小学校は車で片道20分ほどかけて通わなければならず、冬には30センチほどの雪が積もる。山本義則さん(75)は「いずれ不便さを感じるかもしれない。できることは手助けしたい」と話す。

 にぎわいづくりへ、元住民たちは4月、名物のシダレザクラを囲む初の祭りを開いた。楠田さん夫妻は「周囲のつながりが温かく、ゆったりと子育てができる。大工仕事を手伝うなど、集落の役に立ちたい」と意気込む。

(2013年6月15日朝刊掲載)

年別アーカイブ