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被爆75年で応募最多 原爆の日忘れぬ「一行のコトバ」 東京・国立市 入選作19日まで展示

 東京都国立市で毎夏、8月6日の広島原爆の日と9日の長崎原爆の日を忘れないための「一行のコトバ」を市民から募る取り組みが続いている。風化の危機感から2012年に市と市民でつくる実行委員会が始め、被爆75年の今年は過去最多の作品が寄せられた。基町高(広島市中区)の生徒が描いた「原爆の絵」のパネルと組み合わせて19日まで、国立市公民館などで展示されている。

 <「原爆ってなに?」7歳の娘と、2歳の息子からいつか聞かれたとき、しっかりと平和の大切さを伝えられる母親でありたい>

 <75年間 私たちは見つめられている 一瞬で消された あまたのまなざし>

 <「また明日。」 その幸せを 忘れるな>

 「ふつうの日になったのか 原爆の日」と題した展示には入選48作品が並ぶ。日常のふとした瞬間や、市内の被爆者の証言を語り継ごうと市が育成した「原爆体験伝承者」の講話を聞いて感じたことを織り込んだ文章が多い。平和は「つくるもの」「一番大事な宿題」の表現も目を引く。

 昨年の1・8倍の1586作品が寄せられた。市内の小中高生が中心で、広島を含む全国からも応募があった。実行委員の木島香織さん(53)は「新型コロナウイルスの影響で開催を悩んだが、被爆75年の節目にたくさんの人が自分の中の8月6日と9日を考える機会にしてくれた」と話す。

 取り組みを貫くテーマは「原爆とえんぴつ。」。被爆地と離れていても鉛筆を手に原爆や平和を考え、失われた命に思いをはせよう―との呼び掛けだ。今年のポスターや展示には市出身のイラストレーター大寺聡さん(鹿児島県日置市)が協力。被爆者の証言から当時の惨状を描き出した「原爆の絵」のパネルとの合同展示は、国立市在住の基町高出身者の橋渡しで実現した。(山中和久)

(2020年8月16日朝刊掲載)

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