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被爆者発 米庭園に砂紋 広島の田中さん デザイン

 米国の5カ所の枯山水庭園が、被爆者の田中稔子さん(81)=広島市東区=に平和をイメージした砂紋をデザインしてもらい、21日の国連「国際平和デー」に合わせてレーキ(熊手)で描く計画を進めている。言葉の壁を越え、被爆者の願いが表現、発信される。

 フロリダ大ハーン美術館(フロリダ州)の枯山水庭園を管理するマーティン・マッケラーさん(70)が発案した。テキサス州のフォートワース植物園や、原爆を開発した「マンハッタン計画」の拠点だったテネシー州オークリッジの庭園などが参加する。

 マッケラーさんは2年前に京都を訪問中、修学旅行生から呼び止められ「平和アンケート」を受けたという。「自分たちにもできることがないか、と模索を始めた」。中国新聞ヒロシマ平和メディアセンターのウェブサイトに「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN(アイキャン))」の活動を伝える英訳記事を見つけたのをきっかけに、ICANとともに活動する田中さんとつながった。

 七宝作家の田中さんは、壁面作品で日展に16回入選した実績を持つ。砂紋の創作を依頼された後、フロリダ大の学生が手作りした小さなレーキ型鉛筆が届いた。実際の庭とレーキの面積を基に、縮尺を計算しながら「へ」「い」「○(わ)」がモチーフの数パターンを描いた。

 「地球の平和が一つの輪となり広がってほしい、との思いを込めた」デザインに「ピースリング(平和の輪)」と名前を付けた。日米をまたぐ共同作業に「被爆者として、作家として励みをもらった」と喜ぶ。

 当初は各庭園で一斉に市民イベントが開かれる予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大で断念。それぞれが砂紋引きをビデオ収録し、21日に北米日本庭園協会の主催でオンライン会議を開く。被爆時にやけどを負い、多くの同級生を失った田中さんの体験証言も加えて映像作品に仕上げ、後日公開する。

 同協会によると、北米には枯山水を含め約200の日本庭園がある。マッケラーさんは「核兵器なき平和な世界を求める田中さんの願いが胸に響いた。来年も続けたい」と話している。(金崎由美)

(2020年9月7日朝刊掲載)

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