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黒焦げの仏像で平和訴え 原爆資料館で「新着展」始まる 広島

 広島市中区の原爆資料館で21日、昨年度に寄贈された被爆資料などを紹介する新着資料展が始まった。遺族が保管してきた遺品を中心に99点が並び、原爆の悲惨さを伝える。

 東区の山田幹雄さん(64)が寄贈したのは、2008年に94歳で亡くなった父の明さんの遺品の真っ黒に焦げた仏像(高さ約25センチ)。明さんが原爆投下翌日、爆心地から約500メートルの立町(現中区)で靴屋を営んでいた兄夫婦の自宅兼店舗の焼け跡で拾ったという。

 明さんは原爆で、兄夫婦を含め親族を10人以上亡くした。自身も爆心地から約3キロの尾長町(現東区)の自宅で被爆した。「父は生前、自室に飾った仏像を寂しそうにじっと見つめることがあった。家族をしのんでいたのだろう」と、山田さんは振り返る。

 展示会場には、焼け焦げた衣服、被爆者が母に宛てて書き残した手紙などもある。京都府亀岡市から訪れた会社役員山口昭さん(52)は「戦争の悲惨さを忘れてはいけないと実感した」と話していた。無料。来年6月15日まで。(田中美千子)

(2013年6月22日朝刊掲載)

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