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被服支廠再調査3000万円 前回調査に批判噴出 広島県議会総務委が可決

 広島市に残る最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」(南区)で、広島県議会総務委員会(11人)は30日、耐震性の再調査費を含む2020年度一般会計補正予算案を原案通り可決した。10月6日の本会議でも可決される見通し。ただ、これまでの存廃議論の前提となっていた2017年度の前回調査が揺らぐ事態に、県議からは根強い批判が噴出した。

 全4棟のうち3棟を所有する県は、補正予算案に再調査費3千万円を盛り込んだ。建物本体のれんが壁の強度を調べ、新たに設ける有識者検討会で保存工法を探る。れんが壁の強度が想定より高い可能性があり、前回調査に基づき1棟の耐震化に28億円、活用に33億円とした試算額を3分の1程度に減らせる見込みがあると説明している。

 総務委では、出席した10人のうち4人が被服支廠を取り上げた。全棟保存を求める公明党議員団(6人)の田川寿一氏(西区)は、県が1800万円を投じた前回調査と、再調査の根拠となる強度の食い違いを指摘。「前回調査は何だったのか。存廃の議論が根底から変わる」と追及した。

 県経営企画チームの三島史雄政策監は、二つの調査の隔たりについて「前回調査は安全(を重視する)側に寄った調査だった」と答えた。建築の専門家たちでつくった当時の委員会の見解も引き合いに、前回調査は正当だったと強調した。

 自民党広志会・つばさ(7人)の平本徹氏(安芸郡)は「何を根拠に耐震化費用が3分の1に減るのか」とただした。三島政策監は、3月に撤去した周囲のれんが塀をくりぬいた強度試験で本体のれんが壁の強度が高い可能性が出た点や、専門家の見解が根拠だと説明。再調査で「耐震補強の工法や概算工事費を明らかにしたい」と答弁した。

 自民党大志会(1人)の坪川竜大氏(呉市)は「被爆建物の存在意義や価値を示すため、利活用にこそ積極的に予算を投じるべきだ」と要望した。

 補正予算案の起立採決では、委員長を除く8人が賛成した。田川氏と坪川氏のほかに、最大会派の自民議連(33人)の5人、第2会派の民主県政会(14人)の1人が立った。平本氏は退席し、反対者はいなかった。(樋口浩二)

(2020年10月1日朝刊掲載)

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