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被爆体験 語り継ぐ 広島市の「伝承者」9期生研修開始 「証言者」は初めてゼロ

 広島市が養成する「被爆体験伝承者」に応募した9期生の研修が1日、始まった。3年間の研修を経て、活動開始を目指す。市は同時に、被爆者が自らの体験を語る「被爆体験証言者」も募集したが、本年度の応募は2012年度の制度開始以来、初めてゼロ。高齢化の影響が浮き彫りになった。

 中区のJMSアステールプラザで開かれ、42人のうち32人が参加した。原爆資料館の土肥幸美学芸員が、被爆時の熱線や爆風による建物被害のほか、放射線被曝(ひばく)の後障害などについて説明。「基礎知識を学んだ上で、被爆者の気持ちに思いを巡らせてほしい」と呼び掛けた。

 コロナ禍にある本年度は、例年より約4カ月遅れで開講。その分研修日程は過密で、今月末までに計8回を予定する。広島大大学院の教授や医師たちから学ぶほか、養成に協力する被爆者12人の証言も聞く。

 9期生は8都府県の20~70代で、15人が被爆2、3世。NPO法人代表の吉川真理さん(65)=東区=は「被爆した母の平和への思いも含め、原爆のむごさを伝えたい」と意気込んでいた。伝承者の養成制度は12年度から始まり、現在は150人が原爆資料館などで活動している。

 一方、被爆体験証言者は、2年間の研修を終えて活動中が19人で、平均年齢は85・55歳。18年度の45人、19年度の37人から大幅減が続く。稲田亜由美・被爆体験継承担当課長は「亡くなったり入院したりした証言者がいる上、本年度の募集は新型コロナの影響も大きく受けた」と話している。(新山京子)

(2020年10月2日朝刊掲載)

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