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広島の若者たち 動画や本で平和発信 

日常や核兵器 思いを1分に 動画 市立大生 11本公開

 広島市立大(安佐南区)の学生が「平和とは何か」との思いを1分間に凝縮した動画を作り、動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開している。戦争のない日常生活の尊さ、差別や偏見、核兵器などに焦点を当てた11本。それぞれが抱く平和の形を表現している。(猪股修平)

 国際学科1年の山中景暁さん(18)は、3歳のころに祖母と歩いた散歩道を当時の目線の高さで撮影した。道沿いの花、草の香りに囲まれ、出掛けるのが楽しかった「あのころ」を追体験する。「最初の記憶が平和を感じる原風景。戦争のない状態だけでなく自分の内側にある平和を見つけてほしい」と語る。

 雲南市出身のデザイン工芸学科1年原田和奏さん(19)は、女の子が登場する自作アニメーションで、勉強ができ、大切な人と一緒にいるのは「当たり前のようで、当たり前じゃない」と訴える。「新型コロナウイルスの影響で帰省できず、家族との時間を思い出した。日常こそ平和と伝えたかった」と話す。

 動画制作は2008年に始めた連続講義「平和インターンシップ」の一環。新型コロナの影響で、被爆建物を巡るフィールドワークから変更した。指導教官の1人で同大広島平和研究所の河炅珍(ハ・キョンジン)准教授は「平和をめぐる多様な思考を知るきっかけにしてほしい」と話している。

本 被爆・空襲 高校生聞き取り 証言集を発刊

 創価学会広島青年部(広島市東区)は7日、広島の被爆者と福山空襲の体験者の証言集を発刊する。終戦から75年を迎え、戦争被害の実態を学び次代に伝えてもらおうと、県内の高校生27人が8人にインタビューした内容をまとめた。

 タイトルは「75―未来へつなぐヒロシマの心」。18歳で被爆した増井健三さんは、広島市中区と南区に架かる御幸橋を境に爆心地方面は被害が大きく「無声映画のように音がしない、薄暗い、死の世界に迷い込んだ感じ」と証言した。インタビューした県立広島商業高2年の錦織由菜さん(17)は「私は『音がない』と感じたことはない。原爆で街が壊滅したと聞くと、帰る家がある幸せをあらためて感じた」と話す。

 市立広島工業高2年の橋野恒貴さん(16)は、7歳の時に皆実町(現南区)付近で被爆し、叔父と弟を原爆で亡くした深田利幸さんを取材した。深田さんは、父親がやけどで化膿(かのう)した叔父の背中からうじ虫を箸でつまみ取る様子などを振り返り、「戦争は残酷で愚かな行為」と核兵器廃絶を願う気持ちを吐露した。橋野さんは「核兵器は絶対に使ってはいけないことを再認識した」と言う。

 同学会は1974年から被爆証言集を出版し、今回は4年ぶり12冊目。初版は5千部を印刷。1冊1200円。問い合わせは出版社の第三文明社☎03(5269)7145。(猪股修平)

(2020年10月7日朝刊掲載)

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