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反核の訴え 世界へ 被爆証言の旅 仲間広げる 「おりづる特使」抱負

 非政府組織(NGO)ピースボートの「おりづるユース特使」として、広島、長崎の被爆者と7月から地球一周の船旅をする早稲田大3年瀬戸麻由さん(22)=呉市出身=が24日、広島市役所で記者会見し、「核なき世界の実現に向け、一緒に行動できる同世代の仲間の輪を広げたい」と抱負を述べた。

 被爆者9人の「証言の航海」に同行し、説明の補足役を務め、体調を気遣うなどサポートに当たる。瀬戸さんは「訪問する国との関係を踏まえ、被爆者の話を理解してもらえる環境づくりに徹したい」と力を込めた。

 6回目となる今年の証言の航海は被爆体験の継承をテーマにしており、その役割を担う若者の特使を初めて公募した。7月18日に横浜を出港、東南アジアや地中海、中南米の計19カ国を巡り、10月中旬に帰国する予定だ。(石井雄一)

この人 ピースボートの「おりづるユース特使」に選ばれた 瀬戸麻由さん

被爆証言継承 孫の使命

 非政府組織(NGO)ピースボートが募った「おりづるユース特使」に全国でただ一人選ばれた。「被爆証言と向き合い、継承の形を模索したい」。広島、長崎の被爆者計9人と7月に出発する「証言の航海」への使命感を強くする。

 早稲田大国際教養学部の3年生。母方の祖母は原爆投下の10日後、炊き出しや救護で広島市に入り被爆したと小学生の頃に母から聞かされた。

 「世界を見てみたい」との好奇心から2年前、ピースボートの船旅に3カ月参加。広島、長崎の被爆者と乗り合わせ、自身が被爆者の孫であることを初めて意識した。サポート役を買って出て、被爆体験に基づく紙芝居づくりを手伝った。

 原子力の「平和利用」をうたう原発と「軍事利用」の核兵器。船旅の仲間とこの問題を話し合った。その直後、東日本大震災と福島第1原発事故が起きた。「核は身近な問題と思い知らされた」

 一方、船を下りた後の日常での議論の場が少ないことに危機感を抱いた。「私たちは被爆証言を聞ける最後の世代」と自覚する。「航海後も一緒に学び活動できる同世代の仲間の輪を広げたい」と思い描く。

 大学は「社会に出る前に多くの経験を積みたい」と休学した。今は呉市川尻町の実家に戻り、両親と祖母、兄、妹と暮らす。

 特使に決まった後、近くに住む母方の祖母を訪ね、被爆体験を聞いた。同居する父方の祖母は被爆者ではないが、疎開先の広島県安芸太田町で負傷者を手当てした時の話をしてくれた。「原爆は被爆者だけの問題でないとあらためて思った。被爆3世の自分と核問題との関わりを見つめ直す旅にしたい」(石井雄一)

(2013年6月25日朝刊掲載)

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