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故松林監督 銀幕の世界観 桜江出身 「社長」シリーズや「人間魚雷回天」

生誕100年で展示会 15日から江津

 江津市桜江町出身の映画監督、松林宗恵さんの生誕100年を記念した展示会が15日、市総合市民センター(江津町)で始まる。喜劇を得意としつつ、学徒出陣の経験に基づいて戦争も描き、2009年に89歳で亡くなった。映画監督、僧侶、海軍士官という三つの顔を持ち、気さくな性格で慕われた姿を振り返る。親交のあった後輩は「人柄や作品に触れてほしい」と呼び掛ける。(下高充生)

 松林さんは1920年、桜江町の寺に生まれた。東宝入社後、第2次世界大戦で海軍に入隊し、中国での戦闘を経験。終戦後に映画監督としてデビューし、森繁久弥さんが主演の人気喜劇「社長」シリーズを手掛けた。戦争を取り上げた「人間魚雷回天」などでは、英雄の登場や声高な戦死者の美化を排し、若い兵士の苦悩を淡々と描写。戦争のむなしさを伝え、「仏教的な無常観、死生観を映した」と評価された。

 展示は、休館中の観光施設「水の国」(桜江町)内の「松林宗恵映画記念館」の所蔵品を中心に約100点を並べる。ポスターのパネルや、松林さんが戦地で持ち歩いた、映画監督黒澤明さんたちが寄せ書きした日章旗の複製などがある。

 松林さんは邑南町の井原小を卒業。同小の後輩で、64年に東宝に就職して松林作品の宣伝を担当した稲積慎吾さん(83)=同町=によると、松林さんは井原の芝居小屋で年に数回あった興行を通して映画にのめり込んだという。「自由な雰囲気の中、俳優に自然な演技をさせる監督だった」と懐かしむ。就職後にあいさつで訪ねた時には「東京のど真ん中で山の中の2人がよく会えたなあ」と笑ってくれた。「展示を通して、多くの人に愛された姿を見てもらえれば」と話す。

 市教委の主催で12月28日まで。火曜休館。午前9時~午後5時。入場無料。市教委☎0855(52)7959。

(2020年10月13日朝刊掲載)

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