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原爆ドーム保存工事 本格化 足場ほぼ完成 外壁を見えやすく配慮

 世界遺産の原爆ドーム(広島市中区)で、保存工事が本格化している。塗装やひび割れ補修作業のため、建物を囲むように築いた鉄筋の足場がほぼ完成。今回の工事では、外壁が見える状態を保てるよう、飛散防止シートで覆う箇所や時間を最小限に抑える。工事期間は来年3月まで。

 足場の高さは、最終的にはドームとほぼ同じ24・5メートルとなる。塗装などが飛散する恐れがある場合だけ周辺をシートで覆い、作業を終えるたびに取り外す。2016年までに行った過去4回の工事では、足場全体をシートで覆ったため、観光客などから残念がる声が上がっていた。

 原爆の惨禍を伝える建物をできる限り見てもらえるよう工夫した4年ぶりの工事について、ボランティアガイドも前向きに捉える。「きちんと保存しなければ後世に伝えられない。これもドームの貴重な姿と説明しています」。周辺で約7年間ガイドを務める被爆2世の大内正子さん(69)=西区=は話す。

 愛知県から40年ぶりに訪れた会社員高木清さん(60)は「記憶は薄れていたが、そのままの形で残っていて良かった。ここに来れば平和について考えられる」とドームを見上げていた。

 保存工事は1967年に始まり5回目。今回は89年に塗装したドーム部分や、らせん階段の鋼材を被爆当時に近いとされる焦げ茶色に塗り直す。壁のれんがの継ぎ目、窓部分の柱のひび割れなども補修する。

 市公園整備課は「ドームの姿を隠さないよう業者に依頼した。新型コロナウイルスの影響で見学者は少ないが、被爆の実情を知ってほしい」としている。(久保田剛)

(2020年10月22日朝刊掲載)

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