[ヒロシマの空白 被爆75年] 被爆者運動の歴史資料収集 広島県被団協 来年結成65年
20年10月26日
相次ぐ団体解散 散逸防ぐ
広島県被団協(坪井直理事長)は、来年の結成65年に向け、県被団協や県内各地の原爆被害者の会に関する資料の発掘・収集を始めた。被爆者の高齢化が進み、各地で会の解散が相次ぐ中、被爆者運動の歴史が刻まれた資料の散逸を防ぎ、後世に伝えるのが狙い。まず、どこにどのような資料が残っているかを把握するため、情報を幅広く募っている。(水川恭輔)
県被団協は被爆から11年後の1956年に結成。原爆被害に対する国の補償を求め、核兵器廃絶を訴えてきた。現在は福山市、呉市など県内15市町の約30団体で構成。一方で、今年7月には世羅町の甲山原爆被害者協議会が解散するなど、被爆者の高齢化で活動を終える団体が増えている。
資料の収集は、被爆75年と来年の結成65年の記念事業。各団体の設立時の案内、会報、規約、会員名簿、記念誌、会合資料、体験記集といった文書類をはじめ、街頭運動で使ったたすきなどの実物資料も募っている。被爆者運動に関する書簡類や日記、手記などの個人資料も募る。
本年度は、まず資料の現存状況を調べる。今月、各構成団体に保管資料をたずねる調査票を送った。資料を持っている被爆者や遺族からの情報提供も広く呼び掛けている。
旧ソ連の核実験などを巡る原水禁運動の分裂をきっかけに64年から同名の別団体として活動している県被団協(佐久間邦彦理事長)など、広島のほかの被爆者団体とも共同で取り組みたい考えだ。寄せられた情報、資料の内容を調べた後、将来的な保存について原爆資料館(広島市中区)の協力を得ながら最適な方法を検討するという。
高齢の被爆者が資料を整理して受け入れ先を探すのは大変だけに、県内では、解散した被爆者団体の資料が焼却処分されていたケースもある。県被団協(坪井理事長)の前田耕一郎事務局長(71)は「戦後、苦しんでいた被爆者たちがまとまり、声を上げていく運動の歴史を実感できる原資料を少しでも多く残したい。ぜひ情報を寄せてほしい」と呼び掛けている。県被団協☎082(241)7226=平日のみ。
(2020年10月25日朝刊掲載)