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島根原発オフサイトセンター 島根県の改修設計 応募ゼロ

 中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)の事故対策拠点となる島根県のオフサイトセンターについて、改修を計画する県が設計業者を選ぶため業者の提案を募ったところ、応募がゼロだったことが27日、分かった。工事の前例がなく業者のノウハウが乏しい点などが原因とみられる。(樋口浩二)

 原子力防災の常識が覆された福島第1原発事故以来、山積する課題の解消がままならない防災業務の実態を浮き彫りにした形だ。

 県は、原発の南東約9キロのセンター(松江市)では10~21日、設計額の目安を2千万円に設定して提案を募集。センターの代替拠点と見込む原発の西約28キロの県出雲合同庁舎(出雲市)でも12~26日に3千万円で提案を募ったが、応じた業者はなかった。

 「まさかゼロとは…」。県原子力安全対策課の担当者はショックを隠さない。県内業者に限る予定だった公募対象を全国の業者に広げたが、成果は出なかった。

 事業費は各2億2千万円、3億円で年度内の完成を見込む。「このままでは間に合わないかもしれない」。担当者はこぼす。

 「応募ゼロ」の一因を県は、難解な工事で業者に実績がないためとみる。福島の事故を受けて、新たにフィルター付き換気設備の導入などが必要とされたからだ。同様に改修する全国7県のセンターのうち設計を発注できたのは福井、新潟、佐賀の3県にとどまる。

 県内の建設業界関係者は「どこまで改修するのか。工事の基準があいまいで手を出しづらい」と打ち明ける。

 一方、2月に各県へ工事の指針を示した原子力規制庁は「各県でセンターの形態は異なる。工事基準を詳細に示すのは難しい」(原子力防災課)とする。

 県防災部の大国羊一部長は「国の基準があれば非常に助かるが、今望むのは現実的ではない」とする。「県民を安全に避難させるための施設。公募条件の緩和など県が工夫して発注につなげたい」と話している。

オフサイトセンター
 原発事故が起きた際、国や立地道県の職員が住民避難などを指示する拠点。島根県のセンター(鉄筋3階一部4階建て延べ約2300平方メートル)は県が2002年3月に完成させた。総工費7億7600万円。原発から約5キロのセンターが機能しなかった福島の事故を受け、県は昨年9月に改修を決定。ことし4月には、国が代替拠点の目安とする原発30キロ圏付近に、県出雲合同庁舎(鉄骨7階建て延べ約7800平方メートル)も選んだ。

(2013年6月28日朝刊掲載)

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