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加納莞蕾 来年度教科書に 安来出身の画家 フィリピンに戦犯恩赦求め活動

「行動の大切さ学んで」

 安来市出身で平和活動に尽力した画家加納莞蕾(かんらい)(本名辰夫、1904~77年)が、帝国書院が出版する来年度の中学校社会科の歴史教科書で初めて取り上げられる。フィリピンで戦犯として裁かれた日本人の恩赦を求めた活動を伝える四女佳世子さん(75)の講演がきっかけ。県内では15市町村でこの教科書が採択され、教諭たちは「知名度が全国に広がれば」と期待する。(高橋良輔)

 現代史で「敗戦からの出発」をテーマにした258ページにあるコラム「旧日本兵の解放」で紹介した。莞蕾が当時のフィリピンのキリノ大統領たちに日本人戦犯の釈放を訴える手紙を送り続け、1953年には105人が釈放されたと説明している。

 帝国書院の中学歴史教科書の編集担当者、岡安直行さん(45)は、敗戦後の軍事裁判で非人道的な行為で裁かれたBC級戦犯がいた史実を伝える題材になると説明。「遺族ではない人が、平和に対する強い思いで行動を起こした。歴史学習を通して、行動する大切さを学んでほしい」と話した。

 きっかけは、2017年に松江市であった全国中学校社会科教育研究大会で、安来市加納美術館名誉館長でもある佳世子さんが講演したことだった。現場の教諭たちに反響があり、参加していた帝国書院の担当者の印象に残ったという。大会に携わり、島根大付属中で歴史を担当する岡田昭彦教諭は「島根で平和に尽力した人が教科書に載ることは大変うれしい。授業で扱われれば、知名度も全国になる」と期待した。

 中国地方では、ほかに三次市や山口市などでも、この教科書の採択が決まっている。佳世子さんは「莞蕾は平和の大切さを子どもたちに伝えたいという思いを持っていた。全国の中学生や、多くの人に知ってもらえるきっかけになってほしい」と喜んでいる。

(2020年10月29日朝刊掲載)

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