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ゆだ苑訪問 コロナで修学旅行 小学校増加

広島から変更 県内で平和学習「今後も」

 県原爆被爆者支援センターゆだ苑(山口市)は今月に入り、平和学習で訪れる県内の小学校が増えている。新型コロナウイルスの影響で修学旅行先を広島市から県内に変更したため、原爆・平和を学ぶ機会を持てなくなった。施設の存在自体を知らない児童も多く、ゆだ苑は「コロナ収束後も利用し、県内の原爆被害を知ってほしい」と願う。(山下美波)

 今月中旬、山口市の湯田小の6年生37人がゆだ苑を訪問した。被爆時に着ていた学生服など資料約300点が並ぶ展示コーナーを見学。その後、13歳の時、広島への原爆投下で建物疎開作業中の多くの同級生を失い、自らも入市被爆した折出真喜男さん(88)=周南市=の証言に聞き入った。宗楽歩実さん(12)は「ゆだ苑の存在を初めて知った。被爆者から直接話を聞くのも初めてで、当時の状況がよく分かった」と話していた。

 同校は例年、修学旅行で広島市を訪れ、原爆資料館を見学していた。しかし、今年は新型コロナの影響で下関市へ行き先を変更。斎藤達範教諭(34)は「他校がゆだ苑を利用したと知り、依頼した。地域で学べる良い機会になった」と言う。

 県教委によると9月上旬時点で、県内の公立小学校279校のうち7割以上の211校が本年度の修学旅行の行き先を県内とし、22校が中止した。例年、県西部は広島市を訪れる学校が多かったという。

 ゆだ苑では今月、湯田小のほか県内へ行き先を変えた山口市内の4校の訪問を受け入れた。12月に予定する光市の小学校は、原爆犠牲者の遺骨が見つかった同市江良の慰霊碑も訪れるという。

 ゆだ苑の坂本由香里事務局長によると、これまで県教委を通じて県内の小中学校に利用を呼び掛けていたが、学校単位での訪問はなかったという。坂本事務局長は「山口にも被爆資料を展示し、被爆者が思いを託している場があると地元の子に知ってもらえ、うれしい」と喜ぶ。新型コロナ収束後も活用してほしいと、県内の被爆者の状況を伝える資料を充実させ、学べる環境を整備したいとしている。

(2020年10月31日朝刊掲載)

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