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「原爆献水」インドで出版へ 広島国際学院大教授が英訳 環境と平和考察

 広島市の原爆慰霊碑に手向ける水の水源を分析し、環境保全や平和について考えた本「原爆献水」(2010年、広島銘水研究会編)が近くインドで出版される。同会会長で広島国際学院大(広島市安芸区)の佐々木健教授(63)=バイオ・リサイクル専攻=が英訳し、内容に共感した同大客員教授でインドのラベンシャウ大地学部長のナチケタ・ダス教授(57)=地質学=が監修、出版社と話をまとめた。

 原本は、8・6行事で原爆慰霊碑前に献水される水源など、広島都市圏の約20カ所を23年間にわたって調査した結果や、12年に93歳で亡くなった宇根利枝さんの献水活動などが記されている。

 ダス教授は「水質を20年以上も調査し続けた報告は貴重。ウラン鉱山の廃水汚染が深刻な古里オリッサ州で水質の大切さを訴える教材にしたい」としている。

 また、同教授は「広島と長崎の原爆はアメリカの不必要な実験だったのに、インドでは必要だったと考えている人が少なくない」として原爆の悲劇と背景も一緒に伝えるという。ただ、同教授は自国の核兵器については「米国が核を持つ以上は必要」としている。

 本は、5~6月に来日しているダス教授が佐々木教授と協議しながら翻訳を完成させ、新たに原爆被災写真などを加える。オリッサ州にあるパキゴラ・プロカシニ社から年内にも出版する。

 「環境保全と平和の継承はつながる」が持論の佐々木教授は「ダス教授が評価してくれたため英訳に踏み切った。ヒロシマが広く伝わるのはありがたい」と話している。(田中伸武)

(2013年6月29日朝刊掲載)

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