×

ニュース

核軍縮へ「11の指標」 中曽根外相演説 開発の凍結要請

■記者 岡田浩平

 中曽根弘文外相は27日、都内であった日本国際問題研究所主催の講演会で、核軍縮・不拡散に向けた基本指針として「ゼロへの条件-世界的核軍縮のための『11の指標』」を発表した。

 指標は、核軍縮▽国際社会全体の措置▽原子力の平和利用-が柱。

 核保有国のうち米国とロシアの協調、指導力の強化を求める一方、中国など他の保有国にも運搬手段を含む核兵器開発の凍結を要請。核弾頭の廃棄など後戻りのない軍縮や、核兵器数など関連情報の開示も訴えた。

 国際社会全体の取り組みに核実験の禁止を掲げ、米国には来年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議までの包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を期待。中国、インド、パキスタンにも「発効促進プログラム」をつくり批准の働き掛けを強める。弾道ミサイルの規制手法の検討も掲げた。

 その上で、NPT再検討会議の前の早い時期に日本として「2010年核軍縮会議」(仮称)を主催する考えを表明。「国際社会の一致した行動を生み出したい」と述べた。

 原子力の平和利用では、国際原子力機関(IAEA)との連携を重視。今秋にもアジアの原発導入国に呼び掛け核の安全についての国際会議を東京で開く方針などを示した。

広島市立大広島平和研究所 水本和実准教授
被爆国ならではの提言を

 中曽根弘文外相が「核兵器のない世界」をテーマにした演説で示した11の指標について、広島市立大広島平和研究所の水本和実准教授(52)=国際政治=に分析してもらった。

 北朝鮮などアジア周辺国にとどまらず、すべての核兵器国に大幅な核軍縮を求めたのは一歩前進だ。11項目のどれもが核の削減に欠かせないステップ。国内で核武装論もくすぶる中、核軍縮へのまとまった考えを対外的に示す上でも効果的といえる。

 しかし、「核兵器のない世界」を掲げる米政権の主張を後追いしただけにも見える。核兵器廃絶を広島、長崎の被爆体験に基づく「悲願」としながら、米国の核抑止力を再確認している点も従来の繰り返し。被爆地に言及する以上、核兵器の非人道性をもっと強く主張すべきだった。被爆国日本は独自の提言ができる立場にある。

 さらに、核兵器の先制不使用を含めて、「核の傘」を縮小する新たな提言をしなければ、核軍縮は真に前進しない。北大西洋条約機構(NATO)加盟国など、米国の核抑止力に頼る国々と連携して、核兵器への依存を低下する具体策を検討すべきだ。

 ただ、外交上の限界もあるだろう。外相の前向きな姿勢は否定せずに注目し、被爆地が後押しをしていかなければならない。(談)

(2009年4月28日朝刊掲載)

年別アーカイブ