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丹下が礎 記憶の継承 生誕100年 広島でシンポ 震災と絡め討論

 広島市中区の平和記念公園を設計した建築家丹下健三の生誕100周年を記念するシンポジウムが29日、原爆資料館であった。建築家ら4人が意見交換。丹下が「平和をつくりだす工場」と呼んだ公園が持つ意義は、東日本大震災を経て重みを増していると評価した。(渡辺敬子)

 大震災の復興祈念公園構想の検討に携わる建築家内藤広さんは「記憶をどう伝えるか考えるとき、平和記念公園と原爆ドームが引き合いに出る。立ち上がる勇気を与えてくれる広島は、未来に対する遺産と知恵を持っている」と指摘した。

 旧制広島高卒で広島を「第二の古里」と愛した丹下。建築史家の松隈洋さんは「無名の人々の思いに最も寄り添った原点が広島だった」と述べた。

 丹下は平和記念公園の建設に情熱を注いだ後、大阪万博や東京都庁をはじめ国内外の大プロジェクトを数多く手掛けた。その業績は経済成長によって支えられた側面も持つ。

 批評家の松山巌さんは「時代を予見する力の強さだ。丹下の仕事から戦後の日本を問い直したい」。広島諸事・地域再生研究所代表の石丸紀興さんは「丹下が残したものを守り、生かす努力を続けよう」と呼び掛けた。

 約320人が参加。香川県などでつくる実行委員会が、瀬戸内国際芸術祭の一環として企画した。

(2013年6月30日朝刊掲載)

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