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千羽鶴の願い 次代に届ける 9・11遺族との交流記す

 広島へ投下された原爆と米中枢同時テロの遺族同士らが折り鶴を通して交流する姿を描いた子ども向けノンフィクション「奇跡はつばさに乗って」(講談社)が6日、発売される。

 四六判、160ページ。1155円。著者はニューヨークに住み、日米交流を進めるNPOで働く源(みなもと)和子さん(50)=奈良県生駒市出身。インターネットの会員制サイトのミクシィに自らつづった記録を基に、小学校高学年から読めるよう分かりやすく書いた。

 源さんは2007年、テロで崩壊した世界貿易センタービルの跡地(ニューヨーク)に設けられた追悼施設に、「世界平和を願うシンボルに」と折り鶴が約1万羽展示されていることを知った。それまで毎年、米国の教師たちを広島市の平和記念公園に案内した経験があり、追悼施設内で千羽鶴について講演することを申し出て、認められた。

 そこから、さまざまな人とのつながりが生まれた。源さんの仲介で、被爆の10年後に白血病で亡くなった佐々木禎子さんが折った鶴が、兄の雅弘さんによって追悼施設に寄贈された。雅弘さんはテロの遺族たちとも会い、交流した。

 さらに雅弘さんは10年、原爆投下を命じたトルーマン米大統領の孫、クリフトン・トルーマン・ダニエルさんに米国で初めて対面した。源さんは同行して通訳を務めた。その際の2人のやりとりなども本で紹介している。

 源さんは「折り鶴は傷ついた人を癒やすなど人を動かす力を持っている。それを知って、平和な世の中にするには、どうすればいいのか考えてほしい」と話している。(増田咲子)

米中枢同時テロ
 2001年9月11日、米国で旅客機4機が乗っ取られ、経済や政治の心臓部に当たる重要な建物を狙って仕掛けられた大規模テロ。うち2機はニューヨークの世界貿易センタービル2棟に突っ込み、ビルは崩壊。もう1機は首都ワシントン近郊にある国防総省に激突、残り1機はペンシルベニア州に墜落し、計約3千人が死亡した。

(2013年7月1日朝刊掲載)

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