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「黒い雨」2月結審も 控訴審初弁論 原告、棄却求める

 原爆投下後に放射性物質を含む「黒い雨」に国の援護対象区域外で遭い、健康被害が生じたと訴える広島県内の男女84人(うち12人は死亡)が被爆者健康手帳の交付を求めた訴訟の控訴審の第1回口頭弁論が18日、広島高裁であった。被告の広島市と県、国側は「原告が被爆者である科学的知見は存在しない」とし、原告全員に手帳を交付するよう命じた一審広島地裁判決の取り消しを求めた。原告側は、被告の控訴を棄却するよう訴えた。(松本輝)

 原告団の高野正明団長(82)=佐伯区=が意見陳述し、「私たちに残された時間はわずかしかない。早く被爆者と認めてほしい」と訴えた。西井和徒裁判長は、争点となる原告の健康被害と原爆放射線の関係を巡り、12月24日を回答期限として双方に釈明を求めた。次回は来年2月17日を予定し、結審する可能性もあると述べた。

 被告側は控訴理由書を陳述し、戦後の複数の調査から「黒い雨は火災のすすを含んだもので、原告が浴びるなどした場所に放射性降下物が降った科学的知見はない」と強調。「健康被害を生じる可能性のある原爆放射線の影響を認めることは困難」などと主張した。

 閉廷後にあった原告側の報告集会で、弁護団の竹森雅泰(まさひろ)弁護士は高裁が次回に結審する可能性に言及した点に触れ「高齢の原告の置かれた状況を踏まえた判断を導こうという気概を感じた」と指摘。地裁判決の維持に期待感を示した。

 7月の地裁判決は、放射性微粒子を含む黒い雨が、国の援護対象区域である「大雨地域」よりも広範囲に降ったと認定。黒い雨を浴びたことと、がんや白内障を発症した原告の疾病の関連が想定されるとし、原告全員を被爆者と認めると判断した。被告側が控訴した一方、厚生労働省は「援護対象区域の拡大も視野に入れた再検討をする」と表明。専門家による検討会の初会合が今月16日に開かれた。

(2020年11月19日朝刊掲載)

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