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社説・コラム

天風録 『ならず者たちよ』

 米国のロックバンド、イーグルスの代表曲「Desperado」は、ピアノ上手なら弾き語りしたくなるような哀愁たっぷりのメロディーがいい。直訳は「ならず者」だが、捨て鉢な友人をたしなめる歌詞からすれば、「頑固者」がふさわしいかも▲こちらは正真正銘の「ならず者兵器」だ。黒海とカスピ海に挟まれたアゼルバイジャンとアルメニアが、ナゴルノカラバフ紛争で、製造も保有も使用も全て条約で禁止されているクラスター弾を使った疑いが出ている▲コロナ禍でよく聞くようになったクラスターとは「ブドウの房」を意味する。1個の親爆弾が上空で無数の子爆弾に分かれ、サッカー場よりも広い範囲に降り注ぐという。無辜(むこ)の民を巻き込む非人道兵器にほかならない▲「スローモーションの大量破壊兵器」と呼ばれる対人地雷にも似て、紛争が終わっても不発弾が地上に残り、やはり民が犠牲に。両当事国にクラスター弾を提供した国があるとすれば、それもまた「ならず者国家」だ▲♪デスペラードよ、そろそろ目を覚まさないか…。イーグルスのこの曲が発表された1973年、やっと米軍はベトナム戦争から撤退した。意味深な歌詞が心に染みる。

(2020年11月21日朝刊掲載)

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