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むつみ園 耐震工事へ 入園者はのぞみ園に 広島市 新規受け入れ1年停止

 広島市は、2022~23年度に原爆養護ホームの舟入むつみ園(中区)の耐震改修工事をする方針を決めた。大規模地震で倒壊する危険性が高く、工事中は入園者に同じホームの倉掛のぞみ園(安佐北区)に移ってもらう。工事に伴い両園は新規入園を約1年停止する。現在5年前後とされる待機期間も延びる見通しだ。(水川恭輔)

 市内には原爆養護ホームが4園あり、一般養護ホームの舟入むつみ園は定員100人。鉄筋5階、地下1階の延べ約5千平方メートル。1970年、市と広島県が費用を負担し、国の補助も受けて建設した。広島原爆被爆者援護事業団が運営している。

 市によると、17年度の耐震診断で震度6強から7程度で倒壊する恐れが判明。入園者が生活しながらの工事は騒音や振動の影響が大きく、困難と判断した。耐震化の概算事業費は5億8千万円を見込む。

 当初は、全入園者が移れる規模の空き施設を探したが、バリアフリー未対応など適当な施設はなかった。将来的に被爆者ではない高齢者も入所できる民設民営施設を新築する可能性について、社会福祉法人に聞き取りをしたが、費用負担や介護職員の不足を理由に消極的だったため断念した。

 入園者が移る特別養護ホームの倉掛のぞみ園は、定員300人と4園で規模が最も大きい。年間70人程度の退園があり、のぞみ園と同じ事業団が運営していることから、受け入れが可能と判断した。

 新規入園の停止は21年4月から約1年間。今年10月末時点の待機者は、むつみ園は409人、のぞみ園は857人。市によると、被爆者健康手帳を持っていれば一般の老人ホームでも原爆養護ホームと同じ費用負担で同様のサービスを受けられるが、「同じ体験、思いをした被爆者と暮らす方が安心する」などの理由で希望する人が多い。

 耐震改修の方針は20日の市議会厚生委員会で明らかにした。市調査課の河野一二課長は「入園者や待機期間が長くなる被爆者には、面談や電話相談を通じて細やかな対応をする」としている。

(2020年11月21日朝刊掲載)

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