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あす広響被爆75年特別定演 指揮のフェドセーエフに聞く 音楽を平和の懸け橋に

27年ぶり「オケ成長した」

 ロシアを代表する88歳の名指揮者、ウラディーミル・フェドセーエフ。10日の広島交響楽団「被爆75年特別定期演奏会」でタクトを振るため広島入りし、広響とリハーサルを始めた。第2次世界大戦の記憶をもつ巨匠に、今回の公演に込めた思いを聞いた。(西村文)

  ―コロナ禍が世界中の音楽界を揺るがす中、来日を決意した理由は。
 被爆75年の特別な公演なので指揮を引き受けた。私も同じ戦争経験者として広島の人々の気持ちが分かる。私は幼い頃にナチス軍によるレニングラード(現サンクトペテルブルク)包囲戦を経験した。被爆者も高齢になられている。コロナで大変なときだが、音楽が皆さまの助けになれば幸いだ。

 ロシアではモスクワや地方でもコンサートが再開されているが、日本より感染状況は深刻。ホールは席数の4分の1しか観客を入れることができないのが現状だ。

  ―広響の指揮は27年ぶりになりますね。
 リハーサルを通し、広響の成長ぶりを感じた。音楽に対する真面目な姿勢や意欲がすばらしい。ロシアの音楽を理解し、作品に深く入り込んでいる。ロシアの心と一つになっていることに感動した。

 国や言葉は違っても、音楽は悲しみ、希望、愛を伝えることができる。(公演で披露する)ロマン派のチャイコフスキーは音楽で愛を語り、近代音楽のショスタコービッチは世界を結び付ける力がある。活躍した時代は違うけれども、ともに偉大な作曲家であり、「人々の気持ちを一つにする」という点では同じだ。

  ―5年前、ロシアの楽団を率いて広島公演をした際、原爆資料館を訪れたそうですね。
 心が痛み、訪問後、数週間は安眠することができなかった。何の罪もない人々が犠牲になったことは、到底容認できることではない。人々が二度とつらい思いを体験しないで済むよう、音楽が平和の「懸け橋」になることを期待している。

    ◇

 被爆75年特別定期演奏会は広島市中区の広島文化学園HBGホールで午後6時45分開演。プログラムはチャイコフスキーの幻想序曲「ロメオとジュリエット」、ショスタコービッチの交響曲第5番「革命」。6300~5300円(学生1500円)。広島交響楽協会と中国新聞社の主催。コロナ感染防止のため、検温やマスク着用、演奏会後の歓声禁止など来場者に協力を呼び掛けている。広響事務局☎082(532)3080。

(2020年12月9日朝刊掲載)

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