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社説・コラム

[ひと まち] 折り鶴レイ 思いつなぐ

 折り鶴を連ねたレイ(首飾り)のプレゼントを通じ、世界中の人たちと平和の願いを分かち合う取り組みが再び動き始めようとしている。広島市西区の高橋史絵さん(83)が10月、広島を訪ねて来た外国人に手作りのレイを贈ってきた20年間の活動に終止符を打ったが、佐伯区三筋の杉岡好美さん(71)たち2人が引き継ぎたいと申し出た。

 原爆資料館元館長で被爆者の故昭博さん(2011年に80歳で死去)の妻である高橋さんが00年から、昭博さんたちの被爆体験を聞いた外交官や外国人学生に、母国の国旗の色に合わせた自作のレイを渡してきた。被爆の実態に耳を傾けてくれたことへの感謝を込めて始め、市などの依頼も受けて続けてきた。

 ただ、体調がすぐれないことなどから今年10月に活動を終え、折りためていた鶴は、折り鶴の平和プロジェクトを展開中の五日市公民館(佐伯区)に託した。

 「何か居ても立ってもいられなくて」。そのことを新聞記事で知った杉岡さんはすぐに同公民館に向かい、友人1人と共に高橋さんの取り組みを継ぎたいと伝えた。背中を押したのは新型コロナウイルス禍の中でのある出来事だった。

 4月、佐伯区の障害者施設でクラスター(感染者集団)が発生し、杉岡さんは利用者や職員を勇気づけようと10人ほどの友人と千羽鶴や絵手紙を贈った。数日後、鶴を飾った施設玄関の写真とお礼の手紙が届いた。「励みになったと思うと胸が熱くなった。折り鶴の力をあらためて感じた」

 その後、公民館の仲介で杉岡さんと友人は高橋さんに会い、レイの作り方を教わった。レイを通じたこれまでの交流の思い出話を聞き、レイに向く滑りにくい木綿糸や折り紙なども教えてもらった。

 「まさか後継者が現れるなんて。驚きとうれしさで胸がいっぱい」と相好を崩す高橋さん。その横で杉岡さんは「ヒロシマの願いを世界に発信できる活動。心を込めて折ります」と誓った。思いのバトンがつながった。(石井千枝里)

(2020年12月14日朝刊掲載)

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