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社説・コラム

天風録 『今年の子ども』

 高校受験を控えていた40年前の12月、衝撃のニュースに接した。ジョン・レノンの死。勉強も忘れ、「イマジン」などを聴き続けた。平和や愛といったジョンが歌うメッセージに共感しても、夢見がちで何もできない15歳だった▲米国の少女ギタンジャリ・ラオさんは違う。インターネット上のいじめを予防するアプリを開発した。いじめにつながる単語が送信されそうになると、人工知能(AI)技術で探知し、別の言葉に変えるようにと促す▲誰かを幸せにしたいと願う15歳は「キッド・オブ・ザ・イヤー(今年の子ども)」に選出された。最も影響力のある子どもをたたえようと、米のタイム誌が今回初めて企画した▲「性別や肌の色などで人の役割が決まるのはおかしい」。インド系米国人のラオさんは語る。水道水の鉛汚染が起きたのをきっかけに3年前、飲料水に含まれる鉛を調べる装置を作った。優秀な発明家・科学者である▲スウェーデンのグレタ・トゥンベリさんも15歳の時、地球温暖化に危機感を抱いて行動を始めている。ジョンの歌を聴いたことはあるのだろうか。平和な世界を、夢や想像にとどめず、実現してくれそうな子どもたちが頼もしい。

(2020年12月12日朝刊掲載)

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