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被服支廠 水彩で描く 広島の藤登さんが30点

 アマチュア画家の藤登弘郎さん(84)=広島市安芸区=が、保存活用を巡り議論が続く「旧陸軍被服支廠(ししょう)」(南区)の水彩画を約30点仕上げた。県内最大級の被爆建物と向き合い、犠牲者に思いを寄せる。来年4月に開く個展で披露する。

 赤れんがの重厚な外観や、爆風で曲がってさびた鉄扉―。被爆直後に被災者が収容され、多くの人が亡くなった室内も描いている。昨年末、4棟のうち3棟を保有する県が「2棟解体、1棟外観保存」の原案を発表したのを機に、年明けから絵筆を握った。

 倉庫群の周辺を歩き、被爆証言や新聞記事を読み込むなどしてイメージを膨らませた。「建物の前に立つと、犠牲者への弔いの気持ちが湧く」。原爆を耐え、年月を経たれんがの質感を出そうと、色使いも工夫を重ねたという。

 藤登さんは、地場銀行を定年退職した約30年前に水彩画を始め、被爆建物や被爆樹木を描き続けている。個展「旧陸軍被服支廠から原爆の悲惨さを」は4月21日から旧日本銀行広島支店(中区)で開催する。「世界的に貴重な建物。壊せば全てが無になる。存在を広め、全棟保存へつなげたい」(桑島美帆)

(2020年12月15日朝刊掲載)

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