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社説・コラム

[NIE これ読んで 担当記者から] 修学旅行 行き先は平和公園

■ヒロシマ平和メディアセンター・新山京子

地元見詰め直す姿 熱心

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、広島市立の中学校の大半が修学旅行先を変更している。そんな中、ホテルに一泊しながら原爆資料館や平和記念公園を訪れた二つの学校がある。被爆地ヒロシマを見詰め直し、平和への思いを強くしてもらう試みだ。(12月15日付朝刊)

 学校生活で欠かせない行事の一つである「修学旅行」。学校から離れた場所で、同級生たちと旅館やホテルに宿泊しながら過ごす時間はかけがえのない思い出になります。

 しかし猛威を振るう新型コロナの影響で、多くの学校は対応を迫られました。瀬野川東中(安芸区)と口田中(安佐北区)は、直前に行き先をユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ、大阪市)から平和記念公園に変えました。

 感染防止の観点から、教諭たちは「悩んだ末の決断だった」と振り返ります。宮島観光を組み入れたのは、何とか旅行気分を味わってほしい、という思いがあったからだそうです。

 平和記念公園で、慰霊碑を巡る瀬野川東中の生徒たちに同行しました。熱心にメモを取る姿が見られ、案内役の大学生たちに積極的に質問していました。「公園をゆっくり歩いたのは初めて。被爆前はにぎやかな街だったと聞いて、その様子を想像した」と兵頭柚来(ゆら)さん(14)。学校だけでは得られない、「場」の雰囲気を感じ取っていました。

 今回、2年生約200人は原爆資料館で被爆者から当時の生々しい様子を聞きました。児玉安司校長は「広島で生まれ育った若者として、被爆者の思いを発信できる人になってほしい」と願っていました。

 「最初はがっかりした」と口をそろえていた生徒たち。平和記念公園で真面目に学ぶ姿から、ヒロシマを知ろうという熱意を感じました。

(2020年12月20日朝刊掲載)

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