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5年前 心筋梗塞に見舞われ断念 被爆証言の船旅 実現 広島の八幡さん「対話訴える」

 8歳の時に被爆した八幡照子さん(75)=広島県府中町=が18日から約3カ月間、非政府組織(NGO)ピースボート(東京)の船で世界を巡り、体験を語る。5年前に参加するはずだったが、直前に心筋梗塞で倒れて断念。今回、心身ともに準備を整え、夢だった世界一周の旅をしながら、核廃絶を訴える。

 船はベトナム・ダナンやギリシャ・ピレウス、メキシコ・マンサニージョなど20カ所に寄港。八幡さんを含む計9人の被爆者は、うち12カ所程度で証言する予定になっている。ベトナム戦争での枯れ葉剤の被害者や、ホロコーストの生存者とも交流する。

 八幡さんは、爆心地から約2・5キロの広島市己斐本町(現西区)にあった自宅で被爆。「黒い雨」に遭いながら家族8人で逃げた。額のけがを治療するため訪れた己斐国民学校(現己斐小)の校庭で、幾筋も掘られた穴に死体が投げ込まれて焼かれていた光景や臭いが忘れられない、という。

 70歳になりピースボートに参加して被爆証言をしようとしていた時に、心筋梗塞で倒れた。しかし昨年5月、本紙朝刊に連載中の企画「記憶を受け継ぐ」で体験を語ったのを機に、証言活動のための学習を始めた。

 広島平和文化センター(中区)の「ヒロシマ・ピースフォーラム」で原爆被害について学んだり、広島市立大の「平和インターンシップ」でフィールドワークをしたりした。今は、広島市の被爆体験伝承者養成事業を受講している。

 「5年前は、世界各地へ行きたい思いだった。今は、核廃絶と次世代への継承という使命感が強くなっている。寄港先での証言や交流を通して、武力でなく対話の大切さについて語り合いたい」。昨年春に習い始めた英語でも、核廃絶を訴えるつもりだ。(二井理江)

(2013年7月8日朝刊掲載)

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