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ブラジル被爆者団体 解散 活動36年 援護策推進に力

 ブラジル被爆者平和協会(旧・在ブラジル原爆被爆者協会、サンパウロ)が昨年末で解散していたことが20日、分かった。日本政府による在ブラジル被爆者援護策が一定に進んだのを受け、36年の活動にひと区切りを付けた。(森田裕美)

 協会は、広島で被爆後にブラジルへ渡った森田隆さん(96)と妻の故・綾子さんたちが1984年に結成。広大な南米で健康不安を抱えて暮らす広島・長崎の被爆者を掘り起こした。

 米国や韓国の被爆者団体とも連帯し、被爆者援護法の枠外に置かれていた在外被爆者の実情を日本政府に訴えてきた。支援者を得て援護法適用を求める訴訟も重ね、日本の被爆者とほぼ同等の援護にこぎ着けた。

 若い世代に被爆の実情を伝える活動にも力を入れ、「ヒバクシャ」の言葉を現地に知らしめた。ただ高齢化は避けられず、結成以来270人余りいた被爆者は今、74人にまで減った。

 コロナ禍で活動が難しくなっている上、現地政府による認可団体として活動を続けるには、税金などの負担が大きいことも解散の背景にあるという。協会で理事を務めていた渡辺淳子さん(78)は「支援して下さった方々へのご恩は決して忘れない」と語る。団体としては解散するが、被爆者相談や交流、証言活動や資料保存などは有志で続ける。

 会長として結成時から協会とともに歩んだ森田さんは「戦争や核、差別に反対し、平和を願う気持ちは変わらない。命のある限り頑張りたい」と話している。

(2021年1月21日朝刊掲載)

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