×

ニュース

島根原発 埋まらぬ溝 新規制基準施行 

地元 厳格な審査求める

中電 稼働へ「申請急ぐ」

 原発の新規制基準が8日施行されたのを受け、中国電力島根原発(松江市鹿島町)の地元では、原子力規制委員会の厳格な安全審査を求める声が上がった。中電は年度内にも2、3号機の審査を申請する方針。今後は地元の判断も焦点になる。(山瀬隆弘、樋口浩二、門戸隆彦)

●地元

 「中電は基準に沿って万全の対策を取ってほしい」。審査を経れば2、3号機の稼働に賛成する鹿島町の無職青山賢治さん(68)は強調した。一方で同町の農業中村栄治さん(77)は「新基準は福島の事故を踏まえていない。事故を忘れて稼働に突き進むのか」と疑念を示した。

 島根県の溝口善兵衛知事は「透明性を確保しながら厳格な審査を」と規制委に望んだ上で、中電にも説明を求める。安全協定に基づき、審査の前に事前了解をするかどうか判断し、審査後も再度、稼働の是非を判断する考えだ。

 国が新たに原発事故に備える範囲とした30キロ圏の自治体も関心を高める。出雲市の森山靖夫防災安全管理監は「県はどんな形で意見を反映させるか具体的に示してほしい」と望む。

 山口県上関町八島は、四国電力が8日、審査を申請した伊方原発(愛媛県伊方町)から30キロ圏内にある。山口県商政課は「愛媛県の対応を注視したい」と当面見守る姿勢を示した。

●中電

 「原子力が稼働しない状況が続けば、収支は極めて厳しい」。中電の信末一之常務は6月の株主総会で、再稼働の必要を訴えた。ある幹部は「粛々と準備を進め、書類が調えば速やかに申請したい」と早期稼働を目指す。

 新基準に対応するため、島根原発には1千億円超を投じる。事故時に原子炉格納容器の圧力を下げるフィルター付きベント設備、指揮命令拠点となる免震重要棟を除き年度内に工事を終える計画だ。

 今回申請しなかったのは、より基準が厳しい沸騰水型で、ベント設備の詳細が固まらないため。「過去に例のない設備で機能の確認や工事期間の確定に時間がかかる」とする。

 来春、稼働40年を迎える1号機の再稼働には、特別点検や巨額の安全対策が必要なため、2015年7月までに対応を判断する方針でいる。

(2013年7月9日朝刊掲載)

年別アーカイブ