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ヒロシマ 行動誓う 核禁止条約 廃絶の一歩に

市民や被爆者 決意新た

 核兵器の使用や開発など一切を禁止する核兵器禁止条約が批准各国で発効した22日、被爆地広島では市民や被爆者たちが集い、条約を核廃絶につなげるために行動すると誓いを新たにした。米軍による原爆投下から75年と5カ月。ようやく生まれた核兵器を非人道的と断じる国際規範に核保有国を巻き込み、実効性のある枠組みにできるか。被爆地の願いと役割をあらためて胸に刻んだ。(久保田剛)

 広島市中区の原爆ドーム前では、市民団体が記念の集いを開いた。「NO NUKES FUTURE(核なき未来)!」などと並べたキャンドルに点灯。「核兵器は国際法で禁止された。これからが人類と核の闘いだ」などの声明文を発表した。

 近くの「原爆の子の像」の前では、新型コロナウイルスの影響で無観客の中、市内の子どもたちが平和創作劇を上演。「私も平和をつくる一人になりたい」。メッセージを発し、被爆者の思いを受け継ぐ決意を表現した。

 広島市の松井一実市長は市役所で記者会見した。条約制定を後押しした多くの被爆者に向けて「核兵器は無辜(むこ)の民を殺りくする絶対悪と訴え続けた被爆者に敬意を表する」と述べた。広島県の湯崎英彦知事も「核抑止に頼らない安全保障に基づく政策提言などの取り組みを強化する」と強調した。

 「私たちと同じ苦しみは決して繰り返されてはならない。被爆者は核兵器をこの世から無くすことを切望する。ネバー・ギブアップ」。日本被団協代表委員で広島県被団協の坪井直理事長(95)はコメントを寄せ、日本政府に条約参加を求めた。

 条約制定は非保有国のオーストリアやメキシコなどが議論を主導。2017年7月、国連で122カ国・地域の賛成で採択された。米英仏ロ中など核保有国をはじめ、米国の「核の傘」の下にある日本や韓国は批准していない。

 制定を推進し、同年にノーベル平和賞を受賞した非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))は、3年以内に批准国・地域を現在の51から国連加盟国の過半数である100へ倍増させる運動方針を掲げている。

 条約は「核兵器を使用する」との威嚇も禁止。核廃絶を検証する具体策などは、発効から1年以内に始まる締約国会議で決める。第1回会議は今年末にもオーストリアの首都ウィーンで開催される見通しだ。

核兵器禁止条約
 全20条で構成し、核兵器の開発や実験、保有、使用、「核兵器を使用する」との威嚇などを全面禁止する史上初の国際条約。前文には核兵器使用によるヒバクシャの受け入れがたい苦しみに留意すると明記した。2017年7月、国連で122カ国・地域の賛成により採択され、同9月に署名・批准がスタート。昨年10月24日、批准数が発効に必要な50カ国・地域に達し、90日後の今月22日に発効した。米ロなど核保有国は条約自体に反対している。現在の批准数は51カ国・地域。

(2021年1月23日朝刊掲載)

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