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亀ケ首試射場 呉発展に寄与 呉 研究者が報告

 呉市倉橋島の戦争遺構「亀ケ首試射場跡」が日本遺産の構成文化財に追加認定されたことを記念したシンポジウムが、地元の倉橋町の桂浜温泉館であった。歴史研究者3人が、試射場設置の背景や島民との関わりなどについて報告した。

 シンポジウムは23日、近くの「長門の造船歴史館」で開催中の企画展「亀ケ首発射場と倉橋島」(3月28日まで)の関連行事として市が催した。

 広島国際大客員教授の千田武志さんは、呉海軍工廠(こうしょう)の成立と試射場の役割に注目。1900年に運用を始めた試射場は、工廠の前身の一つ「呉造兵廠」の拡張計画と連動していると説明。視察に訪れた帝国議会議員らに試験結果など技術力の高さを示して評価され、製鋼部を唯一備える軍港の成立につながったとして「呉の街の発展にも重要な役割を果たした」と指摘した。

 広島会計学院専門学校校長の菅信博さんは、昭和初期に倉橋地区から呉市街に近い音戸、警固屋地区へ移り住む人が多かったと、資料を基に紹介。海軍工廠の働き手になったとし、一帯の軍港としての発展が「島民の暮らしに大きな影響を与えた」と話した。

 広島大名誉教授の下向井龍彦さんも、近世以前の倉橋の歴史などについて報告。亀ケ首へのガイドツアーを行っている地元のボランティアを交えたパネル討論もあった。(仁科裕成)

(2021年1月26日朝刊掲載)

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