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広島県庁舎 復興の軌跡 文書館で展示 写真など50点 初公開も

 原爆で壊滅した広島県庁の戦前戦後を写真や文書でたどる「広島県庁舎の戦災復興」展が、広島市中区の県立文書館で開かれている。初公開資料を中心とした約50点。現庁舎(中区基町)が地元財界や市町村の寄付金を募って建設されたいきさつなどを紹介している。

 戦前の県庁舎は現在の中区加古町にあった。1878(明治11)年にできたルネサンス式木造2階建て。原爆投下時、爆心地から約900メートル南の庁舎は全壊し、職員1141人が犠牲になった。

 同展では、戦前の庁舎写真が載る絵はがき、復興期の市街地図などを展示。被爆後の1945年8月20日に東洋工業(同県府中町)の一部が仮庁舎となり、46年7月からは旧広島陸軍兵器補給廠(しょう)(南区霞)を庁舎として使った歩みを追う。

 旧補給廠時代の庁舎配置図をみると、れんが造りの倉庫13棟に各部局が入居。46年秋に小中学生を招いて開いた運動会の写真もあり、活気を取り戻す市民の姿が浮かぶ。

 一方で庁舎の修繕費などがかさみ、53年8月の臨時県議会で旧西練兵場(中区基町)への新庁舎建設議案を可決。復興途上で県財政も厳しい中、建設予定額9億7千万円のうち1億7千万円を財界や市町村の寄付金で賄う構想が54年度の事業計画書などからうかがえる。県職員も給与の一部を寄せて寄付総額は2億3千万円に達し、56年2月に現庁舎が完成した。

 新庁舎建設中の写真には、復興へ向かう一帯の町並みも写る。同館の荒木清二主任研究員は「原爆で多くの人命を失った広島が再生していく様子を感じ取ってほしい」と話す。9月28日まで。(林淳一郎)

(2013年7月11日朝刊掲載)

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