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被爆線量 大きく修正 放影研再計算 リスク評価は変化なし

 日米両政府が運営する放射線影響研究所(放影研、広島市南区)は11日、1950年代から追跡調査をしている被爆者約8万2千人の推定被爆線量を再計算した結果を明らかにした。線量に大きく影響する爆心地からの距離を、およそ半世紀ぶりに精査。その結果、4119人は従来の推計値に比べ10ミリシーベルト以上増え、うち500ミリシーベルト以上の誤差があったのは35人に上った。

 対象の被爆者は広島5万5227人、長崎2万6646人の計8万1873人。放影研の前身、原爆傷害調査委員会(ABCC)は本人からの聞き取りで、61年までに被爆した場所を割り出した。

 この時に用いた米軍の地図は道路や建物の場所が不正確だったうえ、爆心地からの距離も100ヤード(約91メートル)未満を切り捨てたケースもあった。線量推計の計算式は何度も更新されたが、被爆時の位置データは不備のままだった。

 放影研は2007年から再計算の作業に着手。戦前の詳細な航空写真を使い、爆心地からの距離も可能な限り導き出した。被爆位置までの距離は広島は1人平均0・7メートル従来より遠のき、長崎は同11・4メートル近づいた。

 浴びた線量が10ミリシーベルト以上増えたのは広島3千人、長崎1119人。うち500ミリシーベルト以上増は広島11人、長崎24人だった。一方、10ミリシーベルト以上減ったのは広島7353人、長崎2458人。うち500ミリシーベルト以上減は広島59人、長崎56人だった。

 放影研は、被爆線量が200ミリシーベルトを超えると線量と発がん率が比例関係となるとしている。放影研の「リスク評価」は今回の線量修正を反映させても、大きな変化はなかった。今後は防空壕内などで被爆した人の線量も再計算する予定でいる。

 放影研は、調査対象者のうち希望者には線量データを開示する。(田中美千子)

(2013年7月12日朝刊掲載)

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