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被爆ポンプ絵本 CFで広がる輪 広島の児玉さん親子 支援受け750部印刷

広島・長崎両市の小学校に寄贈

 広島市東区の矢賀小6年、児玉美空さん(12)が手描きした絵本「ひばくポンプ」を広めようと、母の瞳さん(40)がクラウドファンディング(CF)で支援を募り750部印刷した。JR広島駅(南区)南口に残る手押しポンプを通して原爆の惨禍と平和を見つめるストーリー。広島、長崎両市の全市立小と原爆資料館に寄贈した。

 美空さんが最初に手押しポンプを知ったのは2018年。猿猴橋町電停近くにたたずむ1基に「被爆ポンプです。残してください」と記された札が掛かっていることに母子で気付いた。書き添えられた名前から、原爆資料館ピースボランティアの永原富明さん(74)=呉市=だと知った。

 広島駅周辺には、戦前に設置されたとみられる手押しポンプが計6基あった。3基は14年前後、広島駅南口Bブロック再開発事業で撤去され、原爆資料館などに引き取られた。残る3基の行方にも気をもみ、札を掛けていた永原さんとの交流が始まった。

 絵が得意な美空さんは、永原さんの思いを題材に絵本を創作。中国新聞の紙面で紹介されると、西村泰司さん(84)=西区=が「あのポンプにかつて救われた」と名乗り出た。8歳の時、親族を捜すため呉市内から列車と徒歩で向かい、入市被爆した。広島駅前で見つけたポンプを必死に押し、水を口に含んだ。朝から飲まず食わずだった。

 「ストーリーを広めて」と託す永原さんや西村さんと、「世界の人に見てほしい」と話す美空さんの願いをかなえよう―。瞳さんは昨年夏、夫と薬研堀(中区)で営むおでん店「権兵衛」の常連客たちの協力を得ながらCFを開始。目標を上回る約95万円が集まり、ハードカバーのA4判28ページ、日英併記のカラフルな絵本に仕上げた。現在、広島県内の小学校にも寄贈する構想を練っている。

 美空さんは「ポンプは広島の街を見続けてきた。ぼろぼろだけど残さないと」。瞳さんは「原爆を知る入り口として役立ててほしい」と望む。(山本祐司)

(2021年2月1日朝刊掲載)

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