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社説・コラム

天風録 『如月スタート』

 陰暦2月の別の呼び名「如月(きさらぎ)」を国語辞典で引く。厳しい寒さゆえに衣服を重ね着る「衣更着(きぬさらぎ)」が転じたと説くのは新明解。ところが広辞苑は、重ね着を誤りとし、草木が更生する「生更(きさら)ぎ」の意だとする。はてさて、どちらを信じればいい?▲その初日、まさに寒けが走るような出来事がミャンマーで起きた。国軍が政府要人を拘束し、政権を奪取したという。非常事態宣言が出され、電話やネットがつながらない大混乱状態に▲旧軍事政権の流れをくむ野党が大敗した昨年11月の総選挙で大掛かりな不正があったと軍は主張する。仮にそうだとしても、力ずくで権力を奪い取ろうとは、ここ最近の民主化の流れを真っ向から否定したいに違いない▲民主主義の本家本元にも、選挙が盗まれたなどと根拠のない主張を繰り返し、民衆の連邦議会乱入をあおり立てた前大統領がいた。自治を求める若者たちを徹底して蹴散らかし、黙らせようとするアジアの大国もある▲反体制派のリーダーが毒を盛られ、抗議する民衆デモが相次ぎ弾圧される別の国があれば、夜間の外出やカネにだらしない国会議員が相次ぐ国も。はては、民主主義の「生更ぎ」こそが不可欠なのだろう。

(2021年2月2日朝刊掲載)

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