×

社説・コラム

『潮流』 米新政権とイワクニ

■岩国総局長 片山学

 最新鋭ステルス戦闘機F35Bの前で、新たな最高司令官への忠誠を誓う米軍岩国基地の隊員たち5人が、突然画面に映し出された。バイデン米大統領が就任した日、米主要テレビが一斉に放映した特別番組の一幕だ。人気歌手や俳優が多く出演する祝賀的な番組で紹介された30秒程度のビデオメッセージは、米国がイワクニを重要視していることを強く印象付けた。

 岩国基地所属の米軍機によるとみられる騒音被害が島根県西部で急増している。防衛省が設置した騒音測定器のデータを、本紙が独自集計して明らかになった。周辺空域で低空飛行訓練が激しくなっている可能性がある。

 空母艦載機約60機の厚木基地(神奈川県)からの移転が完了して3月末で3年。所属機は倍増した。騒音被害の急増は、在日米軍の再編で岩国基地の軍事拠点化が進んでいることを裏付けていると言える。

 さらに、F35Bを16機追加配備する計画が動き出し、昨年11月下旬からは、関連するとみられる機体を確認した。12月中旬には、初めて岩国基地に飛来した米空軍のB1戦略爆撃機2機を動画に捉えた。基地報道部は「天候などで行き先変更が余儀なくされた際、基地の受け入れ能力を確認するためだ」と説明する。

 だが、中国の海洋進出が加速して米中の緊張がさらに高まれば、岩国基地の利用が増えそうだ。

 始動した米国の新政権で外交や安全保障を担当する閣僚たちは、中国の軍備増強に強い態度で臨み、アジア太平洋地域の安全保障に深く関与していく姿勢を強調している。

 岩国基地を拠点に、軍用機の動きが活発になる懸念は拭えない。イワクニの変容については、地元だけではなく周辺住民も不安を抱えている。暮らしへの影響が広がらないよう、取材を通じて監視を続けたい。

(2021年2月2日朝刊掲載)

年別アーカイブ