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社説・コラム

『この人』 海上自衛隊呉地方総監に就任した 園田直紀(そのだ・なおき)さん

 「常に先頭に立って困難に立ち向かう」―。着任した昨年12月23日、隊員に向けたあいさつを決意で結んだ。現場が動きやすい環境をつくることに主眼を置く。「私や総監部がやるべきことからは目をそらさない。場合によっては悪役も背負う」と力を込める。

 第31航空群(岩国市)司令や航空集団司令官などを歴任。海上自衛隊で航空機畑を歩んできた自らを「極めて亜流」と笑う。だからこそ、旧海軍からの伝統的なしきたりが一部で残る海自の改革も担うべきだと感じる。隊員の任務を一つの船に固定させず、交代で休みを取るクルー制の導入など「伝統も進化している」と語る。

 念頭には人員不足と増える業務量への危惧がある。「疲弊が重なると、同僚や部隊、チームに愛着が持てなくなる。余力をつくることが大切」。海上幕僚監部人事教育部長を務めた経験も踏まえ「機械を操作するのは人。デリケートで難しいが、最も重要なのは人をつくること」と説く。

 中国の東・南シナ海への進出など、海上防衛を取り巻く環境はめまぐるしく変化する。呉地方総監部の大きな役割として「クレイドル(ゆりかご)」を挙げる。「各船は訓練や課題が山ほど計画されている。元気に出て行き、現場で仕事をして、ここで休める。心地いい環境であるように整えてあげたい。自衛隊に理解のある呉の街だからこそできることでもある」

 「地域がどうなっているか知るのが楽しみ」と、赴任先では地方紙を隅々まで読み込む。時間を見つけてはスポーツ観戦や運動でリフレッシュする。神奈川県に家族を残して単身赴任。職域は固定翼操縦士。海将。(池本泰尚)

(2021年2月4日朝刊掲載)

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