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戦争遺跡500ヵ所超掲載 松江の水中特攻基地など 市民団体 県東部調査し本に

 松江、出雲市民でつくる市民グループが県東部の戦争遺跡を調査してまとめた「島根の戦争遺跡」が完成した。現存を初めて確認した松江市美保関町の「水中特攻基地」をはじめ、満州事変から太平洋戦争に至る時代の500カ所を超える遺跡を掲載。「記憶が薄れていく中、島根でも戦争が身近にあったと知り後世に受け継ぐ材料となれば」としている。(高橋良輔)

 戦後75年だった昨年の6月、県内の戦争遺跡をまとめた資料が見当たらないと危機感を持った市民グループ「戦後史会議・松江」のメンバー約10人が調査を開始。代表で元県職員の若槻真治さん(63)を中心に、誰が見ても分かりやすいガイドブックを目指した。

 「戦争遺跡」には、太平洋戦争末期に日本軍が建設を進めた水中特攻基地を掲載した。高さ約3メートル、奥行き約14メートルで、旧海軍資料や地元の郷土史などを手掛かりに発見。魚雷を装填(そうてん)する特殊潜航艇を配備する目的で造られたとみられる。また、日本海の大社湾付近で発見した本土決戦に備える陣地作りの形跡も紹介する。

 このほか、終戦間際の1945年6月に空襲が相次ぐ中で代替の飛行場として完成した大社基地(出雲市)、軍需工場や防空壕(ごう)跡など、さまざまな視点での戦争の痕跡が、写真や地図とともに紹介してある。

 若槻さんは「リアルな戦争の現状がうかがえる」と説明。終戦間際に作られたと推測される遺跡には、鉄もコンクリートも使われず、粗雑な作りのものも多かった。「身近にある戦争遺跡を通じて当時の状況などを思い浮かべ、平和について考えるきっかけにしてほしい」と力を込めた。

 A4判の約150ページ。クラウドファンディングで資金を集め、500部作成した。県内の図書館に配布する。6日午後2時から松江市白潟本町の市市民活動センターで講演会を開く。

(2021年2月5日朝刊掲載)

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