×

ニュース

『核兵器はなくせる』 オバマ声明 大多数が支持 NPT準備委で秋葉市長らが訴え

■ヒロシマ平和メディアセンター編集部長 江種則貴(ニューヨーク発)

 国連本部で開かれている核拡散防止条約(NPT)再検討会議の準備委員会は2日目の5日、非政府組織(NGO)代表のスピーチに各国代表団が耳を傾けた。平和市長会議会長として演説した広島市の秋葉忠利市長は、被爆者の願いを踏まえ、2020年までの核兵器廃絶を強く訴えた。

 秋葉市長は、オバマ米大統領が明言した「核兵器のない世界」は世界の都市や市民の大多数(マジョリティー)の願いでもあると指摘。自ら考えついた造語「オバマジョリティー」を紹介しながら、各国政府が世論を背景に、核兵器廃絶への行動をただちに起こすよう呼びかけた。

 秋葉市長はさらに、被爆し白血病で亡くなった佐々木禎子さんの折り鶴を手に掲げ、「いつまでも子供たちに、絶望的な気持ちで鶴を折らせてはならない」と訴えて締めくくった。

 長崎市の田上富久市長もスピーチし、オバマ大統領が来年に開催するとした世界核安全保障サミットを長崎で開くよう呼びかけた。

 この日は平和市長会議の集会も国連本部であり、広島の被爆者岡田恵美子さん(72)が体験を証言。平和を願ってスピーチした孫の富永幸葵(ゆうき)さん(11)とともに、各国の市長らから温かい拍手を送られた。

(2009年5月8日朝刊掲載)


<解説>米の変化 世界に好影響

■ヒロシマ平和メディアセンター編集部長 江種則貴

 オバマ米大統領が試みる核軍縮外交の「チェンジ(変化)」が、ニューヨークの国連本部で開幕した核拡散防止条約(NPT)再検討会議準備委員会にも好影響を与えている。秋葉忠利広島市長が考えた「オバマジョリティー」も同じ延長線上にあるネーミングだ。

 米国の変化は、準備委での各条約加盟国の冒頭演説(一般討論)でも最大の関心を集めた。2日目の5日にスピーチした米代表は、「核兵器のない世界を目指す」と誓った4月のオバマ大統領のプラハ演説を引用。米ロ間の新たな核軍縮条約交渉、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准と発効などを列挙し、早期に取り組むと強調した。さらに米代表は各加盟国に対し、「互いの違いに焦点を当てるのではなく、協力と合意形成に集中しよう」と呼びかけて発言を締めくくった。

 この多国間主義こそが、一国単独主義に走りがちだったブッシュ前政権からの変化を象徴する。前回(2005年)の再検討会議が実質合意に至らずに失敗したことを悔やむ非核保有国が今回、米国の変化を強く歓迎するのも当然といえる。

 秋葉市長の「オバマジョリティー」も、米政権を後押しする言葉として歓迎された。しかし廃絶の実現は容易ではない。米国内にはなお、根強い「核抑止力」信仰がある。核兵器廃絶への支持が確実に圧倒的多数となるよう、米国内も含め国際世論を一層高める努力が欠かせない。

(2009年5月8日朝刊掲載)

関連記事
『核兵器はなくせる』 NPT準備委始まる 190カ国が意見交換 (09年5月07日)
広島市長 NPT準備委で非核訴え NYで5月 (09年4月28日)

年別アーカイブ