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オスプレイ イワクニ 論戦の外に 「後回し」住民にもどかしさ 機能強化懸念

 垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ12機が今月末にも再び陸揚げされる岩国市の米海兵隊岩国基地。昨夏の先行搬入時には激しい反発も起きた地元だが、今回の参院選ではアベノミクスに代表される経済政策や憲法問題に注目が集まる。基地問題がかすみがちになる中、なし崩し的な基地機能強化が進むのではと懸念する声も高まっている。(堀晋也)

 「これ以上の岩国基地の負担増は許されない。そう思っている人は多いのに、選挙戦では基地問題は後回しになっている」。岩国市黒磯町の主婦大国幸子さん(70)は残念がる。

 28日に地元の基地反対5団体が開く追加配備への抗議集会などで反対の声を上げる考えだが、基地問題への賛否が参院選の投票動向に必ずしも連動しないもどかしさを感じる。

 生活に直結する経済政策が注目されるのは分からないでもない。だが、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)へオスプレイが追加配備されれば、岩国基地への飛来も増え、軍事拠点化が一層進むと思うからだ。

県と市は軟化

 地元は昨年7月下旬の先行搬入時には激しく反発したが、国の安全宣言後は山口県、市は容認姿勢に傾いた。10月に12機は普天間に配備され、ことし3月からは岩国基地を中心に本土訓練も5回、行われている。

 米軍は、オスプレイの安全性に疑念を抱く地元の空気を意識したのか、最初の本土訓練は期間や場所などの詳細な情報を事前に政府を通じて伝えてきた。

 だが、それ以降の4回は大まかな連絡があるだけ。岩国と並んで想定されたキャンプ富士(静岡県)では一度も行われないまま、岩国だけが本土訓練の実績を積み上げている。

違反飛行13件

 昨秋の試験飛行時には、日米合同委員会の合意事項違反となる、学校上空での飛行や市街地上空での垂直離着陸モードでの飛行が岩国市周辺で13件も目撃された。

 滑走路が沖合移設され、拠点性が高まった岩国基地はオスプレイの陸揚げだけでなく、米軍厚木基地(神奈川県)からも艦載機59機が移転する予定だ。

 国策を理由に今後、岩国の基地機能強化が地元の意向とは違う形で進まないとも限らない。「だからこそ今回の参院選でも基地問題の民意を示しておきたい。子や孫のためにも」。大国さんはそう思う。

(2013年7月14日朝刊掲載)

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