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被服支廠方針 見直し検討 2棟解体1棟保存 知事が初言及

 広島県が3棟を所有する広島市内最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」で、湯崎英彦知事は18日、「2棟解体、1棟の外観保存」とする現行方針案の見直しを含めて最終的な方向性を検討すると表明した。見直しに言及したのは初めてで、現段階での解体着手は「適当でない」とする認識も示した。(岡田浩平)

 県は現行方針案である安全対策の原案を2019年12月に示した後、県議会や被爆者団体の意見を踏まえて20年度の解体着手を見送っている。湯崎知事は公表から1年以上が経過する中、「見直し」という言葉を使って、検討の方向性に踏み込んだ形だ。

 県議会の代表質問で、被服支廠を巡る現状認識として①有識者から国の重要文化財級の価値があると示され、現段階で建物の解体を遡上(そじょう)に載せるのは適当でない②国、広島市との間で、費用負担を前提にした協議が必要となる③市が協議の前提として3棟保存を要望している―と説明。3点を総合的に勘案し、この定例会での県議会の意見も踏まえて整理するとした。

 答弁では、壁の補強などの安全対策を早急に検討する必要性も強調した。将来の利活用に支障がなく、耐震補強の費用を抑えられるという視点を念頭に作業を進めるという。

 県は20年12月、耐震性の再調査の結果をまとめた。1棟当たりの概算工事費を3億9千万~17億7千万円と試算。17年度の前回調査時と比べて、全面活用案で半減するなど、費用を抑えられるとしている。加えて、耐震性を確保した上で内部を見学できる「安全対策と最小限の利活用を同時に実現する案」(5億8千万円)を打ち出している。

旧陸軍被服支廠(ししょう)
 旧陸軍の軍服や軍靴を製造していた施設。1913年完成で、爆心地の南東2・7キロにある。13棟のうち4棟がL字形に残り、広島県が1~3号棟、国が4号棟を所有する。県は、築100年を超えた建物の劣化が進み、地震による倒壊などで近くの住宅や通行人に危害を及ぼしかねないとして、2019年12月に「2棟解体、1棟の外観保存」案を公表した。4号棟は、所有する国が県の検討を踏まえて方針を決めるとしている。

(2021年2月19日朝刊掲載)

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