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「被爆者の森」に再び緑を 47都道府県の樹木 一部枯死や説明板紛失 年度内に植え替えへ

被爆者団体 広島市に改善要望

 全国の被爆者団体が核兵器廃絶への願いを込め、47都道府県の県木などを植樹した「被爆者の森」(広島市中区)で、高知、石川両県と北海道の樹木が枯死して姿を消している。樹木にくくりつけた説明板の紛失や劣化も進み、被爆者団体は管理している市に改善を要望。市は本年度中に植え替えなどを進める方針でいる。(猪股修平)

 枯死したのは1990年に植えられた石川県のアスナロと高知県のシラカシ、北海道のライラック。市緑政課や中区維持管理課によると、いずれも2016年3月の樹勢調査では異常はなかった。

 雨が少ない瀬戸内気候にあわせ、寒冷地域の道県は県木に代わる樹木を植えていたものの、近年の温暖化など気候の変動や病気が原因で枯れたとみている。

 記録ではシラカシは17年3月に伐採。19年3月の樹勢調査でアスナロとライラックの枯死も分かり、その後伐採した。このほか、樹木名や県名を表す説明板は5カ所でなくなり、8カ所は経年劣化のため薄くなっているのが分かった。

 被爆者の森は、平和大通り(中区)東端の緑地帯にあり広さ約1ヘクタール。日本被団協が90年に整備した後、市に寄贈した。地元の竹屋小児童による地域学習や、被爆者によるボランティアガイドなど、平和学習の場として利用されてきた。

 3道県の樹木の枯死を受け、県被団協(坪井直理事長)と市原爆被害者の会(神﨑昭男会長)は1月、樹木を植え直し、説明板を補修するよう市に要望。市は「年度内になるべく早く着手したい」と説明する。

 県被団協の田中聡司理事は「復旧を機に被爆者の森に関心を持つ人が増えてほしい」と話している。

(2021年2月22日朝刊掲載)

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