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平和条例提案先送りか 広島市議会 素案へ市民の意見多数 「厳粛な式典」反発も

 広島市議会が制定を検討している平和推進条例で、これまで目指していた本年度中の成立を先送りする公算が大きくなっている。8月6日の平和記念式典について「厳粛の中で行う」などと定めた素案に多くの声が寄せられ、条例案を仕上げて開会中の定例会本会議に議員提案するのが難しくなっているためだ。各会派の代表9人でつくる政策立案検討会議が近く会合を開き、判断する。(新山創)

 市議会事務局によると、素案への意見公募には2月15日までの1カ月間で、593人と5団体が意見を寄せた。市議会による意見公募では過去最多となる。職員がどの条文に対する意見かを仕分ける作業などを進めているが、完了にはまだ数日かかるという。

 複数の関係者によると、当初は条例案を25日に閉会する定例会本会議に議員提案し、採決する方針だった。そのためには条例案を24日までに山田春男議長へ出す必要がある。しかし、多くの意見を整理して検討会議の市議が共有し、十分に議論するには時間が足りず、本年度中に条例案をまとめるのは困難との見方が広がっているという。

 検討会議代表の若林新三市議(市民連合)は提案時期について「あくまでメンバーで協議して決める。さまざまな立場から寄せられた多くの意見について、丁寧に議論したいとの思いはある」と説明している。近く開く会合で、その考えを伝える意向も示す。

 意見公募とは別に、条例の素案を巡っては2月以降、被爆者団体や市民団体が山田議長に相次いで意見書を提出した。内容の修正や削除を求めたり、素案通りの制定を訴えたりしている。

 具体的には、素案が個別の条文で定めた「平和」の定義や「市民の役割」、平和記念式典を「厳粛の中で行う」とした点について、慎重と支持のそれぞれの立場で異なる主張がある。前文に1月発効の核兵器禁止条約に言及していない点を問題視する声もある。

 検討会議は条例案について、9会派による共同提案と全会一致での可決、成立を目標としている。本会議へ議員提案する時期は、開会中の定例会が難しくなった場合、6月開会の定例会に変更するとみられる。

広島市議会の平和推進条例素案
 前文と全10条からなる。各会派の代表でつくる政策立案検討会議が2020年12月、13回の会議を経てまとめた。条例を制定する方針は、市議会の「平和推進・安心社会づくり対策特別委員会」が19年1月に決定。同年6月に検討会議が発足し、議論を引き継いだ。検討会議は19年10~11月、平和関連団体と有識者に意見を聞いており、内容の一部は素案に反映させたとしている。

(2021年3月10日朝刊掲載)

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