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1930年代前半の広島の姿を撮影

■編集委員 西本雅実、記者 藤村潤平

 広島の街並みを1930年代に比治山から撮影したパノラマ写真の存在が7日分かった。「広島写真館」を戦前に営んでいた松本若次さん(1965年に76歳で死去)が撮り、廿日市市地御前の実家に残していた。被爆前のデルタ東部を詳細に記録した写真は広島市などにもなく、現存の確認は初めて。

 プリントは縦16センチ、横106センチ。「比治山カラ見タ広島市街」などの説明書きが張られていた。

 デルタ東部を流れる京橋川に浮かぶ川船、川面にも映る旧平塚町(中区)の家並み、段原地区(南区)では軒先の洗濯物やこいのぼりまでが鮮明に写されていた。1931年完成の広島文理科大本館(戦後は広島大理学部校舎、現存)が見える一方、芸備銀行本店近くに1936年にできる7階建ての広島富国館が写っていないことから、撮影時期は1930年代前半と判断できる。

 当時の市人口は、1935年の国勢調査によれば約31万人。全国7番目の都市広島の市街地を、比治山の御便殿広場からレンズが固定した一点で回るパノラマ・カメラで撮影したとみられる。

 松本さんは移民した米国ロサンゼルスで撮影技術を磨いて1927年に帰郷し、スタジオを開業。プリントを実家に移していたため原爆による焼失を免れ、死去後は親族が保管していた。爆心地一帯となる中島地区を旧商工会議所屋上から1938年に撮った写真も今年に入り見つかった。市公文書館の高野和彦館長は「原爆で消し去られた広島の歩みを確かめられる極めて貴重な写真だ」と話している。

(2009年5月8朝刊掲載)

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