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2013参院選 原発 かすむ争点化 広がる諦め 薄れる関心

 2011年3月の福島第1原発事故から2年余り。昨年12月の衆院選で大きな争点だった原発政策が、参院選ではかすみがちだ。脱原発を掲げる広島市の市民団体は危機感を募らせるものの、デモ行進の参加者が減るなど活動にも陰りが見える。脱原発のうねりを生んだ民意の行方は―。(村田拓也)

 「ぜひ原発を争点に投票して」「安倍政権は原発の再稼働と輸出にひた走っている」。「さよなら原発ヒロシマの会」(中区)は12日、中区の本通り商店街で買い物客に呼び掛け、チラシを配った。

 福島の事故をきっかけに昨年2月、発足した同会は大学教授や平和活動家たち約500人と約50団体で構成する。東京の首相官邸前で毎週金曜の夜に繰り返されているデモに呼応し、昨年10月から広島市中心部で月2回のデモ行進を続ける。

 初回は130人が参加したが、今月5日は3分の1の45人。350人が集まった憲法記念日(5月3日)を除くと減少傾向にある。

 「デモを繰り返しても政府の原発政策が変わらず、諦めも広がっている」と事務局長の滝史郎広島大名誉教授(68)。福島県との距離も遠く、関心が薄れがちという。

 昨年8月6日、野田佳彦前首相は広島市の平和記念式典に出席後、原発ゼロの検討に言及した。だが具体的な道筋を示せず、民主党は先の衆院選で大敗。政権に復帰した自民党は原発再稼働に前向き姿勢を示す。

 今回の参院選に当たり、中国新聞社が広島県内で実施した電話世論調査で、原発再稼働への反対は53・4%と5割を超えた。一方で関心のあるテーマに「原発問題などエネルギー政策」を選んだのは8・0%にとどまった。論戦では、安倍政権の経済政策アベノミクスの是非などに焦点が当たる。

 「安倍晋三首相は原発政策を語らず、野党の訴えも不十分。事故は収束していないのに事故前に回帰する動きに何とかストップをかけたい」と滝事務局長。投票日を2日後に控える19日にもデモ行進を計画する。

 市民団体「ボイス・オブ・ヒロシマ」(中区)の増田千代子代表(62)も9日と16日、知人と「原発NO!」と記したチラシを本通り商店街で配った。

 被爆体験を継承する講座の受講生で2004年に発足。中国電力が山口県上関町で計画する原発建設の反対運動に加わった。福島の事故後は他団体と連携して集会やデモを開いた。

 「原発に不安を感じている有権者は多い。選挙に無関心な人たちを動かしたい」。増田代表は投票日前にもう一度、広島市の繁華街でチラシを配ろうと考えている。

<原発をめぐる主な政党の政策>

民主  2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入
自民  安全と判断された原発の再稼働は、地元自治体の理解が得られるよう最大限の努力
公明  原発への依存度を段階的に減らし、可能な限り速やかに原発ゼロをめざす
みんな 新規の原発設置を禁止。2020年代の原発ゼロを国家目標として実現する
生活  原発の再稼働・新増設は一切容認しない。遅くとも2022年までに最終的な廃止を確定する
共産  原発の再稼働と輸出を中止。「即時ゼロ」を決断し、廃炉プロセスに入る
社民  原発稼働は一切認めず、原発の新増設はすべて白紙撤回。脱原発社会の実現を
みどり 脱原発を着実に実現。核廃棄物の管理、廃炉ビジネスを立ち上げる
維新  先進国を主導する脱原発依存体制を構築。既設の原発は2030年代までにフェードアウト

(2013年7月18日朝刊掲載)

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