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現場から 2013参院選 改憲論戦かみ合わず 有権者の関心低く

 参院選で憲法改正の是非が争点となっている。自民党は改憲の発議要件緩和や国防軍設置などを盛り込んだ改憲草案をまとめた。一方、野党の主張は多様化し、足並みはそろわない。島根選挙区(改選数1)の候補者の論戦はかみ合わず、有権者の関心もいまひとつだ。(石川昌義、川上裕)

 日本青年会議所(JC)島根ブロック協議会が島根県松江市で5月12日に開いた「憲法タウンミーティング」。参院選に立つ4人のうち、2人が壇上に並んだ。

 みどりの風現職の亀井亜紀子氏(48)は「憲法のどこを改めるかを国民に示さず、96条の発議要件緩和から手を付ける手法は受け入れられない」と主張。共産党新人の向瀬慎一氏(42)は「自民党の改憲草案の目的は9条改悪。平和主義を放棄し、戦争のできる国を目指す危険な動きを阻止する」と力説した。

 一方、会場に自民党新人の島田三郎氏(57)の姿はなかった。主催者によると「参加を呼び掛けたが、『日程の都合が合わない』と断られた」という。

 島田氏は、公示後の街頭演説や個人演説会で、改憲への見解を明らかにしない姿勢を貫く。亀井氏と向瀬氏は「自民党が参院選後に改憲に踏み込むことは明白。争点隠しだ」とそろって反発。諸派で幸福実現党新人の池田節子氏(57)は改憲を主張している。

大半がJC会員

 自民党は政権復帰前の2012年4月に改憲草案を発表。昨年末の衆院選と今回の参院選で改憲を公約に掲げた。みんなの党と日本維新の会も改憲に積極的だ。自民党と連立を組む公明党は、発議要件の緩和に慎重な姿勢を見せる。

 一方、最大野党の民主党は、改憲から護憲まで所属国会議員の意見は大きく割れる。生活の党、共産党、社民党、みどりの風は、平和主義の堅持を掲げ、自民党の改憲草案への批判を鮮明にする。

 憲法をめぐる各党の主張が入り乱れる中、有権者の関心は高まっていない。JC主催のタウンミーティングには約130人が参加したが、大半がJC会員。非会員でアンケートに回答した人はわずか15人だった。

 JCは独自の改憲草案を策定するなど、改憲に積極的な一方、国民的な議論の必要性を重視する。タウンミーティングの運営に関わった益田市の会社員椋木洋介さん(35)は「関心が高まらないのは、憲法問題が政治家任せになっているからではないか」とみる。

危機感の訴えも

 市民団体「9条を守ろう益田・鹿足連絡会」は6月15日、益田市で憲法問題講演会を開いた。講師を務めた松江市の弁護士高野孝治さん(70)は「世界に誇れる日本国憲法が掲げる平和主義と基本的人権、生存権の尊重が脅かされる」と危機感を強調した。

 しかし、会場を埋めた約100人の参加者の大半が高齢者だった。同連絡会の事務局を担当する益田市の牧師大住共平さん(27)は「仕事の忙しさや学ぶ機会が少ないため、若者の関心は低い。改憲で目指す方向を政治家が伝えず、有権者もよく理解しないまま、手続きだけが進むのは怖い」と懸念する。

(2013年7月18日朝刊掲載)

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