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愛宕山開発 23年経て完了 岩国市 計画曲折 一部は米軍住宅

 岩国市愛宕町に多目的広場「ふくろう公園」が27日、オープンし、愛宕山地域の一連の開発が着工から23年を経て完了した。米軍岩国基地の滑走路を沖合に移設するための土砂を確保するために始まった事業。一帯を住宅団地とする当初計画は破綻し、一部が米軍関係者向けの住宅となるなど曲折を経た。市民の憩いの場となる一方で、複雑な思いを抱える住民もいる。

 愛宕山の開発事業地は約100ヘクタール。ふくろう公園は、このうち3・7ヘクタールにローラー滑り台のある大型遊具や屋根付き広場、野外ステージなどを備える。普段は市民の憩いの場、災害時は救援活動の拠点として活用する。

 開園を祝う式典には関係者約50人が出席。福田良彦市長は「未来の時代を担う子どもたちが夢を描けるエリアになるようにしたい」と完成を喜んだ。

 市と県が主導して1998年に着工した当初は約1500戸の住宅が並ぶ団地ができる予定だった。しかし、住宅需要の低迷から土砂の搬出後に計画は頓挫。巨額損失を解消するため事業地の4分の3を国に売却した。国は米空母艦載機の岩国移転に伴って必要となる米軍住宅を建設し、日米共用の野球場や陸上競技場を備えた愛宕スポーツコンプレックスも整備した。

 残る4分の1は市が「医療・防災交流拠点」と位置付け、国立病院機構岩国医療センターや、いわくに消防防災センターなども相次いで完成。市が仕上げとして公園を整備していた。一連の市の事業費は約90億円で、うち75%は基地関係の補助金を充てた。

 一方、冷めた目で完成を見届けた住民もいる。そばに住む元市議の田村順玄さん(75)は「子どもにとって今は楽しい遊び場だが、多額の基地の予算でできた施設。将来的にはさらなる基地の負担につながる恐れがある」と話した。(永山啓一)

<愛宕山開発事業をめぐる主な動き>

1997年6月  米軍岩国基地の滑走路沖合移設着工
  98年3月  愛宕山開発事業着工
2005年10月 在日米軍再編の中間報告に米空母艦載機の岩国移転が盛り込まれ
         る
  06年11月 愛宕山開発事業の見直しを開始
   07年1月 防衛施設庁(現防衛省)が米軍住宅の有力な候補地の一つとして
         事業地を買い取る可能性を山口県に伝達
      3月 愛宕山から沖合移設向けの土砂搬出が完了
      6月 県と岩国市が事業中止に合意
      9月 市が事業地の4分の1を「まちづくりエリア」として転用し、残
         りを国に売却する案を提示
   08年8月 住民団体が米軍住宅化反対の要請書を市、県に提出
   10年5月 岩国基地の新滑走路運用開始
   12年3月 国が事業地の4分の3を買い取る契約を締結
   17年7月 米軍住宅が完成
   18年3月 岩国基地への空母艦載機が移転完了
      7月 愛宕スポーツコンプレックスが全面オープン
   21年3月 多目的広場「ふくろう公園」完成

(2021年3月28日朝刊掲載)

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